研究課題/領域番号 |
26463026
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
小倉 直美 日本大学, 松戸歯学部, 講師 (10152448)
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研究分担者 |
伊藤 耕 日本大学, 松戸歯学部, 講師 (20419758)
高橋 康輔 日本大学, 松戸歯学部, 助教 (30705687)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 歯嚢由来細胞 / 神経系細胞分化 / RNA結合タンパク質 / Musashi |
研究実績の概要 |
mRNAの非翻訳領域に結合してmRNA安定性や翻訳を制御するRNA結合タンパク質が多数報告されるようになった.RNA結合タンパク質のHuR, HuD やMusashiは神経系細胞への分化に関与していることが報告されている.一方,歯嚢細胞は,神経細胞分化誘導培地で培養を行うことにより,神経様細胞ヘの分化誘導が可能であることが示唆されている.今年度は,歯嚢細胞で発現しているRNA結合タンパク質の検索を行うとともに,神経系細胞分化に関与するRNA結合タンパク質の検討を行った.【方法】本学倫理委員会の指針に従い,埋伏歯抜歯の際に歯嚢を採取し,collagenase/dispase酵素処理を行い, 歯嚢細胞を得た.歯嚢細胞を神経細胞誘導培地で培養し,神経系細胞への分化誘導を行った.培養1,3,7,14日に蛍光免疫染色を行い,細胞の形態的変化および神経細胞関連マーカー発現を観察した.miRNeasy Mini kitを用いてtotal RNAを抽出し,Microarray解析,real-time PCR法で遺伝子発現を測定した.【結果および考察】神経細胞への分化誘導日数によって,神経様細胞の形態を示す細胞が出現した.Nestinに対する蛍光強度は減少し,β-tubulin 3, S-100は上昇を認めた.DNA Microarray解析から,分化誘導を行っていない歯嚢細胞では, HuR, Musashi-1などのRNA結合タンパク質が発現していた.これらのRNA結合タンパク質について,経時的な遺伝子発現を調べたところ,Musashi-1および-2は誘導1日目で発現上昇を認めた.Musashi-2は誘導3日目以降経時的に発現が減少した.歯嚢細胞は神経系細胞への分化する可能性と,RNA結合タンパク質のMusashi発現変動が神経系細胞への分化に関与する可能性が示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
数十名の埋伏歯の抜歯の患者から歯嚢を採取し,歯嚢由来細胞(歯嚢細胞)の分離・培養後しており,実験に使用可能な歯嚢細胞の例数は増えている. RNA結合タンパク質は神経幹細胞の神経系細胞への分化に関与することは報告されている.今年度は,神経系細胞分化に関与していると報告されているRNA結合タンパク質について検索を行った.また,歯嚢細胞ではどのようなRNA結合タンパク質が発現しているのか,RNA microarray解析によって検索した. 一方,歯嚢細胞を神経細胞分化誘導培地で培養すると,神経系細胞の特徴を有する細胞を認めた.歯嚢細胞は神経堤由来の細胞であり,神経幹細胞や未分化な幹細胞が存在することが示唆される.歯嚢細胞の神経系への分化誘導が可能であること,神経系細胞への分化に関与するRNA結合タンパク質の検討は,今後の再生医療分野においても有意義であると考える.
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今後の研究の推進方策 |
歯嚢細胞の神経系細胞分化および骨芽細胞分化・石灰化に関与するRNA結合タンパク質とそのRNA結合タンパク質が結合するmRNAを検索することを目的に,歯嚢細胞を神経細胞分化誘導培地または骨芽細胞分化誘導培地で培養して細胞を可溶化後,分化関連RNAタンパク質の抗体で免疫沈降を行う.RIP-Chip Assayによって,神経系細胞または骨芽細胞分化関連RNAタンパク質と結合するmRNAの検索を行う.また,培養日数の異なった歯嚢細胞についてRIP-Chip Assayを行い,経時的な変化も検討する. また,歯嚢細胞の神経系細胞への分化に関与するmicroRNAについても検討を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
購入試薬が確定していなかったため.
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次年度使用額の使用計画 |
抗体やreal-time PCR試薬などの購入に使用する.
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