研究実績の概要 |
今年度は,歯嚢細胞の神経細胞分化に関与する可能性のあるRNA結合タンパク質について検討した。さらに,RNA結合タンパク質がGM-CSFおよびG-CSF産生におけるIL-1βとTNF-αの相乗効果に関与している可能性についても検討した。【方法】本学倫理委員会の指針に従い,歯嚢から歯嚢細胞を得た。歯嚢細胞を神経細胞誘導培地で培養し,神経細胞への分化誘導を行った。顎関節内障患者の滑膜から滑膜細胞を得た。滑膜細胞にIL-1βおよびTNF-αを作用させた。Total RNA をRNeasy Mini kitにて抽出し,real-time PCR法で遺伝子発現を測定した.タンパク質量は,ELISA法を用いて測定した。【結果および考察】歯嚢細胞の神経細胞への分化誘導によって,HuR, Musashi-1, Musashi-2などのRNA結合タンパク質が発現上昇した.歯嚢細胞は神経系細胞への分化には,RNA結合タンパク質が関与する可能性が示唆された.滑膜細胞でのGM-CSFおよびG-CSF発現は,IL-1βとTNF-αの共刺激によって相乗的に発現上昇する。一方,M-CSF発現では,相乗効果は認められない。GM-CSFおよびG-CSFの3’末端非翻訳領域には,HuRやAURが結合するAUリッチエレメントが多く存在するが,M-CSFの3’末端非翻訳領域には, AUリッチエレメントが少ない。HuRによるmRNA安定化には,p38 MAPKが関与していると報告されている。IL-1βとTNF-αの共刺激によるGM-CSFおよびG-CSF発現は,p38 MAPK阻害剤で低下するが,M-CSF発現はp38 MAPK阻害剤の影響が認められなかった。よって,滑膜細胞のGM-CSFおよびG-CSF発現におけるIL-1βとTNF-αの相乗効果は,HuRによるmRNAの安定化が関与している可能性が示唆された。
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