研究課題/領域番号 |
26463027
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研究機関 | 鶴見大学 |
研究代表者 |
中川 洋一 鶴見大学, 歯学部, 講師 (90148057)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | シェーグレン症候群 / 唾液分泌 / シスタチン / アポトーシス |
研究実績の概要 |
シェーグレン症候群の唾液腺障害にアポトーシスが係わるという考えがある。シスタチンは、カテプシン、カスパーゼ、カルパインなどのシステインプロテアーゼを阻害するシステインプロテアーゼ・インヒビターである。アポトーシスに係わるシステインプロテアーゼを制御するインヒビターは、疾患抑制機能を果たしている可能性が推察される。そこで、唾液分泌機能低下に及ぼすシスタチンの関与を検討した。 プロテオミクス解析によって、シェーグレン症候群と健常者の唾液タンパクのプロファイルの違いが明らかとなった。そのタンパクのひとつに、シスタチンがあり、シスタチンはシェーグレン症候群患者で著明に減少していた。ドライマウス外来患者の唾液中システインプロテアーゼ・インヒビター活性を測定したところ、シェーグレン症候群患者において著明に減少していた。唾液中シスタチンSは、Western blotting法によって、シェーグレン症候群においてタンパク量の減少が認められたが、シスタチンSA,SNは正常群との差がなかったため、シスタチンSが唾液分泌にかかわるkeyタンパクと考えられた。 今回、シェーグレン症候群の診断のために行った口唇生検組織ならびに粘液嚢胞摘出時ならびに健常ボランティアから得られた口唇腺組織を用い、抗シスタチンS抗体による免疫組織染色とTUNEL染色を行いの組織学的検討を行った。その結果、漿液腺房や粘液腺房の形態的変化が大きいほどTUNEL染色陽性細胞が多く、唾液腺障害にアポトーシスが係わっている可能性が示唆された。シスタチンSは、導管と漿液腺房の細胞質に陽性反応を示し、粘液細胞は染色されなかった。形態的変化が強い唾液腺組織では、漿液半月のシスタチンSの染色性が低下していた。 以上のようなことから、通常働いているシスタチンによるアポトーシス制御機能が破綻し、唾液腺組織破壊に影響を与えている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
臨床で得られた組織を用いた免疫組織染色の条件設定に時間を要した。この理由の一つは、市販の抗シスタチン抗体が、ロットの違いによって抗体価が異なるという問題点があったためである。また、シスタチンとアポトーシスの関連性の検討において、抗カスパーゼ抗体の使用を計画したが、臨床材料の量的な問題から、最終的にTUNEL染色に変更した。このようなことから、臨床研究以降に計画した基礎的検討が遅れている。しかしながら、研究目的は達成しており、この結果を踏まえて当初計画した基礎的研究の内容の妥当性について再検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
臨床的検討から得られた結果から必要な基礎的検討を行い、これを臨床応用して行くというのが本来の研究方法と考えられる。本研究は、効果的な基礎的検討方法を選択するために、27年度前半は臨床的検討を継続する。具体的には、唾液腺破壊に及ぼす因子としてのアポトーシスとその制御へのプロテアーゼインヒビターの係わりを明確にすることであり、各種臨床パラメーターを用いて多変量解析を行う。そのデータから培養細胞を用いたプロテアーゼインヒビターの検討の妥当性を評価することによって研究を推進する。
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次年度使用額が生じた理由 |
市販の抗シスタチン抗体が、ロットの違いによって抗体価が異なるという問題によって研究計画に遅れが生じたことから、その後に計画した細胞培養に係わる試薬、器具類購入が次年度への持ち越しとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
シスタチンS,シスタチンC、TNFα、cycloheximide、抗シスタチン抗体、培養細胞、シャーレ、ピペットなどを 平成27年度に購入し、本来計画した27年度予算に合算して使用する。
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