研究実績の概要 |
シェーグレン症候群の唾液腺障害にアポトーシスが係わるという考えがある。シスタチンは、カテプシン、カスパーゼ、カルパインなどのシステインプロテアーゼを阻害するシステインプロテアーゼ・インヒビターである。アポトーシスに係わるシステインプロテアーゼを制御するインヒビターは、疾患発症抑制機能を果たしている可能性が推察される。そこで、唾液分泌機能低下に及ぼすシスタチンの関与を検討した。 プロテオミクス解析によって、シスタチンはシェーグレン症候群患者で著明に減少していることを確認した。唾液中システインプロテアーゼ・インヒビター活性は、シェーグレン症候群患者において著明に減少していた。Western blotting法によって、シェーグレン症候群における唾液中シスタチンSのタンパク量の減少が認められた。 シェーグレン症候群と健常者の口唇組織を、抗シスタチンS抗体による免疫組織染色とTUNEL染色を行いの組織学的に比較した。その結果、漿液腺房や粘液腺房の形態的変化が大きいほどTUNEL染色陽性細胞が多く、また、形態的変化が強い唾液腺組織では、漿液半月のシスタチンSの染色性が低下していた。以上のようなことから、通常働いているシスタチンによるアポトーシス制御機能が破綻し、唾液腺組織破壊に影響を与えている可能性が示唆された。そこで培養細胞を用いて、シスタチンによるアポトーシスの阻害作用を検討した。HSG cellをスタウロスポリンで処理してアポトーシスを誘導した系に、シスタチンを添加(10mM, 100mM)すると濃度依存的にアポトーシス阻害効果が認められた。 これまでの結果は、シスタチンをシェーグレン症候群のマーカーとしてヒューマンセンシングへ応用できるばかりでなく、シスタチンによってシェーグレン症候群が制御できる可能性を示唆している。
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