研究実績の概要 |
我々は、in vitroのヒト顎関節滑膜炎モデルを作製し、同モデルを使用した顎関節症治療薬の評価判定システムの開発を行うことを目的に,同モデルのタンパクおよび遺伝子発現に対するNSAIDsの効果について解析した。膝関節鏡手術にて得られたヒト滑膜組織から初代培養を行い、得られたヒト膝滑膜組織由来培養細胞をcollagen gelと混和し、collagen scaffoldに播種し、三次元培養組織を作製した。様々な濃度のセレコキシブ(CEL)、インドメタシン(IND)を培養液に添加し、繰り返し圧縮負荷(40kPa, 0.5Hz)を1時間与え、負荷6時間後に培養液中のタンパク濃度(PGE2)をHTRF法にて、三次元培養組織内の遺伝子発現(ADAMTS-4、ADAMTS-5、MMP-1、MMP-3)をreal time RT-PCR法にて測定を行った。 ヒト膝滑膜組織由来三次元培養組織への繰り返し圧縮負荷により、培養液中のPGE2濃度の上昇、三次元培養組織内のADAMTS-4、MMP-1、MMP-3遺伝子発現の上昇が認められたが、ADAMTS-5遺伝子発現において変化は認められなかった。NSAIDs添加により、圧縮負荷により発現上昇したPGE2産生が抑制された。CELはINDより低濃度において、圧縮負荷により発現上昇したADAMTS-4遺伝子を抑制した。MMP-3遺伝子発現はIND 1、10μM添加を除き、CEL添加による変化を認めなかった。 NSAIDsは圧縮負荷によるPGE2産生を抑制し、CEL、INDは圧縮負荷によって発現上昇した、三次元培養組織内のADAMTS-4遺伝子発現を抑制し、CELはINDより低濃度において、発現抑制を認めた。以上の事から、NSAIDsがPGE2産生を抑制するのと同様に圧縮負荷による関節軟骨破壊の抑制効果を持つことが示唆された。
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