研究実績の概要 |
ヒト滑膜細胞の増殖に対する 多血小板血漿(PRP)の影響について検討した。 研究を行うために検体を採取することについてインフォームドコンセントを得た患者(21歳 男性)から、膝関節内視鏡手術の際にヒト滑膜組織を採取し、分離精製した滑膜細胞を37℃, 5% CO2条件下で10% FBS, 5% PRP, 5%活性化多血小板血漿(aPRP)を含んだ培地で培養し、滑膜細胞の増殖に対するそれぞれの影響について比較検討した。またaPRPについては1%, 5%, 10%および 20%の濃度における影響を比較した。さらに培養上清中のInterleukins (IL-1β, IL-6, IL-8) の発現タンパクについても検討した。評価方法として,それぞれの培地における培養5日目の細胞数をWST assayを使用し測定、また顕微鏡にて観察した。培養上清中の発現タンパクの濃度をhomogeneous time-resolved fluorescence を使用し測定した。 10% FBS, 5% PRPと比較して、5% aPRPにおいて有意に滑膜細胞の増殖を認めた。また、3日目から5%, 10%, 20% aPRPにおいて急激に増殖し、培養5日目において5%, 10%, 20% aPRP群において、10% FBS群および1% PRP群に対してそれぞれ有意差を認めた。顕微鏡像においても、濃度依存的に細胞が増殖していることが確認できた。培養上清中のInterleukinsの濃度は、IL-1βではそれぞれの群の間で有意差を認めなかったが、IL-6, IL-8では濃度依存的にタンパクの産生量が増加し、有意差を認めた。またIL-6および IL-8の細胞数あたりの相対値では5% aPRPが最も低かった。 PRPは滑膜細胞を増殖させることが認められた。更にaPRPは濃度依存的に滑膜細胞を増殖させることが判明した。このことにより滑膜の再生においてPRPは有効であると考えられた。
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