研究実績の概要 |
ヒトパピローマウィルス陽性の中咽頭癌患者は陰性患者と比較して治療反応性が良く有意に予後良好であることが知られており、同じ頭頚部癌である口腔扁平上皮癌においても、その一部にヒトパピローマウィルスが関与することが報告されている。本研究は、ヒトパピローマウィルス陽性・陰性口腔扁平上皮癌におけるエピジェネティックな異常の違いを同定することを目指して行った。ヒトパピローマウィルス16単独、ヒトパピローマウィルス18単独、高リスク群(ヒトパピローマウィルス26, 31, 33, 35, 39, 45, 51, 52, 53, 56, 58, 59, 66, 68, 73, 82) 低リスク群(ヒトパピローマウィルス 6, 11)への感染の有無について、手術にて採取した扁平上皮癌検体を用いて、PCR法にて解析、評価を行った。Seeplex HPV4A ACE KitのPCR反応時にヒトβ-globin検出プライマーをコントロールとして用いた。ヒトβ-globinは検出されたが、ヒトパピローマウィルスに陽性症例は同定できなかった。本結果から、解剖学的に口腔に近接する中咽頭癌においてはその多くにおいてヒトパピローマウィルス感染が関与しているが、ヒトパピローマウィルス関連の口腔扁平上皮癌は圧倒的に少ないと考えられた。ヒトパピローマウィルス陽性例が複数同定できた場合、CpGアイランドメチル化形質との関係、ヒトパピローマウィルス感染と口腔癌患者の予後との相関、ヒトパピローマウィルス感染の有無による中咽頭癌細胞株と口腔癌細胞株のエピジェネティックな異常の違い、ジェネティックな異常の違い、遺伝子発現プロファイルの違い等についての検討を行う予定であったが、それらの検討は行えなかった。
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