研究課題/領域番号 |
26463039
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
吉澤 邦夫 山梨大学, 総合研究部, 講師 (60452108)
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研究分担者 |
川尻 秀一 金沢大学, 医学系, 教授 (30291371)
加藤 広禄 金沢大学, 大学病院, 講師 (30444201)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | FAK / FAK pY397 / 浸潤様式 / 転移 / 口腔扁平上皮癌 |
研究実績の概要 |
FAKは、インテグリンを介在するチロシンリン酸化シグナルを含むさまざまなシグナル伝達経路を活性化し、細胞周期の進行やアクチン骨格系の再編成を誘導することで、細胞の生存や増殖、移動に深く関係している。また、浸潤・転移能の高い悪性腫瘍で、FAKが過剰発現していることが報告されており、分子標的薬のターゲットとして注目されている。しかし、FAK発現と口腔癌に関する臨床病理学的な関係を述べた報告はほとんどない。そこで、口腔扁平上皮癌におけるFAKおよびその活性化に関わるリン酸化FAK発現の臨床病理学的意義について検討することを目的とした。 方法は、免疫組織化学的染色法で、口腔扁平上皮癌一次症例70症例を用いて、それぞれの切片をFAKおよびFAK pY397(リン酸化)を染色し、発現強度で評価し、臨床病理学的因子との関係を評価した。その結果では、FAK陽性群では、FAK陰性群に比べて局所再発率が高く、予後不良であった。また、FAK pY397では、陰性群に比べて陽性群において局所再発率と浸潤様式が高くなり、予後不良であった。 in vitroの実験系として、浸潤様式の由来が明確な口腔扁平上皮癌細胞株を3型, 4C型、4D型からそれぞれ用いたが、浸潤様式間で有意なFAK発現差は認めず、浸潤様式3型のHSC-2のFAKが発現が比較的高かった。また、口腔扁平上皮癌におけるFAK発現は、正常線維芽細胞株に比べて3倍ほど高かった。 上記の実験研究を行ってきたが、食道癌などの他部位の癌においては、FAKの過剰発現と転移との相関があると報告されている。しかし、今回の免疫組織化学染色法における臨床病理学的検討においては、転移との相関はないものの、FAK発現は、浸潤様式や局所再発率と相関し、予後不良を示した。今後もFAK発現の臨床病理学的意義を検討すべく研究を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の実験計画通りに進行しており、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
転移能を調べる上では、ヌードマウスを用いてFAK発現群、FAK 抑制処理群に分け、ヒト由来の口腔扁平上皮癌をマウスの口底部に注入し、そのリンパ節転移率、転移巣を顕微鏡下で確認する。また、FAKと複合体をなす注目すべき細胞骨格系タンパク質 paxicilin, talin, actinについても、その機能発現とメカニズムについて検討したい。これらの結果予想としては、浸潤様式が高い細胞株においてFAK発現が高発現し、浸潤様式が低い細胞株および正常細胞においてFAK発現が減弱していることが予想される。この点からFAK発現が最も亢進している細胞株を用いて、FAK siRNAを導入あるいはFAK阻害剤処理をしてFAK発現を強く抑制化する。遺伝子・タンパクレベルにおいてFAK発現の減弱化を確認した上で、3D浸潤モデルにて浸潤能の変化をとらえるが、予想としては、浸潤能が低下することが予想される。その結果、FAK発現減弱化により、浸潤能の変化が明らかにin vitroで確認できれば、マウスを用いての実験系に移る予定である。マウスの実験系では、これまでの研究で最も強いリンパ節転移能を持つOSC-19細胞株をコントロール群として口腔底に注射し正所性移植に用いる。
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次年度使用額が生じた理由 |
2014年度は、10月に金沢大学より山梨大学へ異動となり、山梨大学で研究体制を整えるまでに時間を要し、本研究に用いる助成金の使用を十分に行えなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
2015年度に618,245円が繰り越されることになるが、前任地の金沢大学で行った研究を引き続いていくために、研究物品や消耗品を購入するために必要である。
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