研究実績の概要 |
過去の研究で口腔扁平上皮癌細胞ではグリコーゲン代謝酵素の活性が上昇していることが明らかとなった。そこで本研究課題では(1)残された代謝経路であるグルコ-ス-6-リン酸の代謝の解明(解糖系との関連)、(2)グリコーゲン代謝バランスの解明(活性調:異化、同化のバランス、各種酵素の発現量の違いを明らかにする)、(3)口腔扁平上皮癌の分化度および増殖能とグリコーゲン/糖代謝の関連性(活性調、代謝バランス)の解明を行う。 上記目的において研究期間1年目(平成26年度)には下記の研究成果が得られた。 1,グルコ-ス-6-リン酸の代謝の解明(解糖系との関連):ホスホグルコムターゼ、グルコキナーゼおよびグルコ-ス-6-ホスファターゼの免疫組織染色は現在3症例(3患者)終了。まだ有意差には至らないものの、異型細胞でグルコ-ス-6-ホスファターゼが強く染色されている。一方、ホスホグルコムターゼ、グルコキナーゼは異型細胞、正常細胞での差があまりない印象である。 2,グリコーゲン代謝バランスの解明:口腔粘膜異型性上皮の細胞株(SAS,Ca9-22, HSC2, HSC3,SquuA, SquuB)と正常粘膜上皮を対象に、グルコース代謝酵素の発現を検討したところ、ウエスタンブロット法ではグリコーゲン代謝酵素であるGlycogen Phosphorylase BBが正常細胞と比べて癌細胞株でより強いバンドを検出した。またreal-time PCR法でもGlycogen Phosphorylase BBが癌細胞株でmRNAの発現が強いことが明らかとなった。 3,口腔扁平上皮癌の分化度および増殖能とグリコーゲン/糖代謝の関連性の解明:口腔扁平上皮癌の切除標本(5名分:それぞれ癌組織、正常組織10検体)を収集しメタボローム解析(ヒューマンメタボロミクス社に依頼)を開始した。結果はH27年5月中旬に届く予定である。
|