癌の研究において、がんと代謝は重要なテーマであり、口腔扁平上皮癌においてグリコーゲンは糖代謝の起点/キー物質である。これまでの研究で、口腔扁平上皮癌細胞では、グルコースの取り込みが(Glut-1の発現)が亢進していること、グリコーゲンの分解(分解酵素であるglycogen phosphorylase isoenzyme BBの発現)が亢進していることを見いだした。また、グルコースおよびグリコ―ゲン代謝で残された経路である、グルコ-ス-6-リン酸の代謝を解明するためグルコ-ス-6-リン酸の代謝酵素であるGlucokinase、Phosphoglucomtase3、Glucose-6-phosphataseの発現を免疫組織学的に検討した結果、GlucokinaseとGlucose-6-phosphataseの発現が亢進していることが明らかとなった。 またメタボローム解析(癌組織10検体、コントロール正常組織10検体)の結果では、酵素活性を裏付ける代謝産物の亢進が確認された。また一方では、グリコーゲン→グルコース→解糖系への移行で観察される物質が癌では観察されず、グルコースは解糖系に移行していない可能性が示唆された。その代わりにグルタミン酸やアミノ酸が癌組織で多く検出されており、グルタミン代謝やアミノ酸を利用したエネルギー産生が行われている可能性がある。また、グリコーゲン→グルコース→G6Pは、ペントースリン酸経路に取り込まれ核酸の合成に関わっている可能性がある。
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