研究課題/領域番号 |
26463047
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
合田 啓之 愛媛大学, 医学部附属病院, 助教 (00464371)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | interleukin-6 / CAF / VEGF-A / VEGF-C |
研究実績の概要 |
近年、多くのがん種において interleukin-6 (IL-6) の予後予測因子としての有用性が報告されており、われわれも早期口腔扁平上皮癌患者における術前血清 IL-6 の予後予測の有用性について報告してきた。しかしながら、そのメカニズムについては、いまだ十分な知見が得られていないのが現状である。本研究では、近年報告されてきた IL-6 と血管新生また、リンパ管新生を中心とする癌進展との関連について検討を行った。 2006 年から 2012 年までに当科を受診した早期口腔扁平上皮癌患者 53 症例について術前血清 IL-6 値を ELISA にて測定し、予後との比較を行った。また、手術検体を用いて抗 IL-6 抗体および抗 CD34 抗体を用いた免疫組織学的染色法にて局所評価を行った。さらに IL-6 の局在を確認後、口腔扁平上皮癌患者の手術検体より正常部線維芽細胞および腫瘍部線維芽細胞を培養し、主要な血管新生因子である VEGF-A 、リンパ管新生因子である VEGF-C の発現を検討した。 予後予測因子として術前血清 IL-6低値群は,高値群に比較して Disease free survival の延長が有意に認められた(P<0.05).また、局所における評価では、IL-6 は腫瘍部に比較して腫瘍間質部に大部分の局在が認められ、術前血清 IL-6と腫瘍間質の IL-6 発現には強い相関が認められた (P<0.001)。さらに CD34 陽性細胞数と血清 IL-6 値にも相関が認められた (P<0.001)。また、手術検体から培養した腫瘍部線維芽細胞は、正常部線維芽細胞に比較し、腫瘍関連線維芽細胞のマーカーである αSMA の高発現が認められ、また、VEGF-A および C の高発現が認められた。 口腔扁平上皮癌の進展において腫瘍関連線維芽細胞は重要な役割を担っていることが示唆され、IL-6 と腫瘍関連線維芽細胞との関係は口腔扁平上皮癌の治療における新たなアプローチとしての可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
口腔癌の進展に関わる重要な分子として interleukin-6 を抽出し、その局在および分泌に重要な役割を果たす因子として腫瘍関連線維芽細胞についての機能解析を行った。次年度以降は、さらなる機能解析を行い、interleukin-6 signal の阻害による癌進展およびリンパ節転移の抑制について検討を進めていく準備が整った。
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今後の研究の推進方策 |
vitro における癌進展、血管、リンパ管新生の検討を行った後、vivo での interleukin-6 signal の阻害による影響の検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
検体から抽出した RNA の質が悪く、予定していたマイクロアレイ解析の検体数が予定を下回ったこと、また、それに伴う付随した PCR、ELISA 等の解析が行えなかったことが原因と考えられる。
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次年度使用額の使用計画 |
前年度に計画した検体数を含めての解析を行う予定であり、前年度繰り越しした研究費を用いて解析試薬等が必要となる。また、vivo も予定していることより関連試薬等に使用する予定である。
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