唾液腺癌は種々の抗癌剤治療に対する感受性が低く、抗がん剤抵抗性(耐性)を示すことが多い。このため、 唾液腺癌の治療現場において抗癌剤耐性の分子機構を解明することは、重要な課題の一つである。 抗がん剤耐性を呈する癌細胞ではP-糖蛋白が高発現し、その耐性に深く関与することが知られている.本研究では、P-糖蛋白の発現量に関与する因子:YB-1 と核/細胞質間をシャトルする機能を持つNPMとの相互作用機構を明らかにすることで 、唾液腺癌の抗癌剤耐性機構を解明し、さらにNPMを治療の標的とすることで癌細胞で強く発現されているYB-1 の核移行を抑制し、唾液腺癌の薬剤抵抗性を克服するという新規治療法を開発することを目的とした。 (成果)1、 唾液腺癌組織及び唾液腺癌培養細胞におけるYB-1およびNPM発現の検索を進めた. 2、 動物実験モデルにおけるYB-1とNPMの相互作用の評価:既に当施設で樹立している腺様嚢胞癌のマウス自然転移モデルを用いて、センダウィルスベクターにNPMのshRNAを搭載し、マウス舌に発現させた腺様嚢胞癌の病巣局所に注入し、唾液腺腫瘍でのYB-1の発現量、腫瘍細胞内での局所様式、抗癌剤感受性の変化を比較検討した。 抗癌剤感受性については、腫瘍の推定重量が100~300mgとなった時点でマウスをベクター注入群と非注入群に分け、当科で口腔がん化学療法に用いている抗癌剤を至適の投与量で投与した。更に治療 開始後の各時点でのベクター注入群及び対照群おのおのお推定腫瘍重量を求め、おのおのお治療開始日の推定腫瘍重量との 比を算出した上で相対腫瘍重量比の値を算出した。 また、YB-1の発現量、局在については各々のマウスの舌の唾液腺腫瘍から切除標本を作成し、免疫組織学的に評価を行っていった。
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