研究実績の概要 |
これまでの研究でHR関連修復遺伝子BRCA2のpathwayが温熱と関連していることが示唆された。そして、HRの一つの指標であり、BRCA2とcomplexを形成するRad51のfocusが温熱処理後に増加することが確認された。温熱によってDSBが誘導され、HRによって修復されるのが確かであれば、温熱処理後、DSB認識タンパク質γH2AXとRad51との共局在が確認できると考えられる。チャイニーズハムスター由来肺線維芽細胞(CHL)を44℃60分の温熱処理をし、4時間後にサンプリングし、γH2AX抗体およびRad51抗体による二重染色により、免疫組織蛍光染色法を行った。また、比較対照としてX線照射を10Gy行った同細胞にも4時間後にサンプリングし、同様の実験を行った。X線と同様に温熱処理でもγH2AXとRad51との共局在が確認できた。 次に、もし、温熱誘導DSBにKuのリン酸化が重要であれば、これらのリン酸化酵素(ATRなど)の阻害剤を用いることで、温熱によるKuのリン酸化およびDSBからの解離を阻害することが可能であると考えられる。CHLをATR阻害剤(VE-821)単独、44℃10分の温熱処理およびそれらの併用を行い、コロニー形成法によって生存率を算出した。生存率はそれぞれVE-821単独で78%,温熱処理単独で71%であったのに対し、VE-821で処理し、同時に温熱処理をすると11%と著しい相乗効果が得られた。よって、温熱誘導DSBにはKuのリン酸化が重要である可能性が示唆された。そこで、ヒト舌扁平上皮癌細胞株を温熱単独およびVE-821と温熱との併用を行い、γH2AX抗体で免疫組織蛍光染色法を行った。温熱単独よりもVE-821と温熱処理との併用では倍ほどのγH2AXの発現を認めた。よって、温熱誘導DSBにはKuのリン酸化が重要である可能性が示唆された。
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