Trifolirhizinには近年抗アレルギー作用の存在が示唆されており、漢方配合剤ASHMIによる気管支平滑筋収縮の解除機構としてPKA活性化を介した経路を示唆する結果を得ている。しかし一方で漢方成分の作用にはいまだ不明な点も多く、我々は一部の成分が気管上皮へ作用しその結果産生されたPGE2等のケミカルメディエータが気管支を二次的に弛緩させるという、気管クロストーク仮説を考えた。 気管支平滑筋の初代培養細胞をASHMIより抽出したTrifolirhizinで前処理することにより、100uM以上の濃度でヒスタミン刺激による細胞内カルシウム濃度;[Ca2+]i上昇の抑制傾向が見られた。一方ASHMIあるいはTrifolirhizinに暴露させた気管上皮細胞の上清で前処理した気管支平滑筋細胞にはヒスタミン刺激による[Ca2+]i発現量の抑制は明らかにはならなかった。そこで収縮の指標として[Ca2+]i 変化に加えmyosin light chain(MLC)のリン酸化(MLCp)を測定することとした。平滑筋収縮の抑制機構として、PKCを介する経路の増強の他にも上記の前処理薬剤が影響を及ぼす細胞内伝達経路の候補に挙げているPKAを介する経路、中でも直接MLC phospataseを刺激する直接経路とRhoAを抑制することによる間接経路も検討に加えることとした。具体的には現在U-73122によるPLC抑制によるPKCを介する経路への影響に加え、RolipramによるPKAの抑制によるphosphoCREBの産生量減少、およびY-27632によるROCK抑制を標的として各経路を確認し、上皮由来メディエータを介した気管支平滑筋のシグナル調節の作用伝達経路を検討中である。
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