研究実績の概要 |
私たちはティッシュエンジニアリングの手法より開発した培養口腔粘膜の臨床応用とその粘膜再生能について検討を重ね、培養口腔粘膜は口腔粘膜を良好に再生させることを明らかにしたが、現在の培養方法では上皮細胞は増殖能、分化能が不均一な細胞集団であり、患者によっては細胞増殖能の劣る培養口腔粘膜が作製される恐れがある。そこで口腔粘膜上皮細胞集団の中から口腔粘膜上皮前駆/幹細胞が多いといわれている小型細胞集団より作製したEVPOMEの生体内移植後の粘膜再生能を評価したところ、良好な粘膜再生能と上皮細胞の長期の生存およびその再生過程に血管新生が関与していることが示唆された。本研究では小細胞集団より作製されたEVPOMEによる粘膜再生機構と特に新生血管がどのように関与するのかを検討した。平成26年度は患者の口腔上皮細胞より小型細胞集団を選別し、選別しない細胞集団と細胞増殖能を比較検討した結果、両群間の増殖能は小型細胞集団の方が若干優れている傾向にあり、また両群の上皮細胞で作製したEVPOMEにおいて増殖マーカーであるKi-67の発現が小型細胞集団の方が多い傾向にあった。平成27年度では幹細胞マーカーといわれているp63による免疫組織化学的検索で、p63陽性細胞はどちらも基底層に連続的に認められ、小型細胞集団よりなるEVPOMEでは基底層よりさらに上層にまで認めた。平成28年度にかけては、背部皮下移植モデルによる形態学的検討を行ったが、移植後よりEVPOME上皮は伸張し術後21日目には管腔構造を示したが、小型細胞集団よりなるEVPOME上皮のほうがKi-67,p63陽性細胞ともに多い傾向にあり、移植後も増殖能の維持が保たれており、上皮幹細胞、前駆細胞が多く存在すると考えられた。その伸張上皮の周囲には多数の毛細血管を含む肉芽組織を認め、これにより上皮の伸張が促進されることが示唆された。
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