研究実績の概要 |
これまで, 頬脂肪体の被膜にはFibro-adiposeが豊富で小葉間結合組織を形成していること, また通常の皮下脂肪に比較して可塑性に富むこと, さらに小葉内に顎動脈・顔面動脈由来の微細脈管ネットワークが発達していることなどが示されている. また発生については, 胎生14~16週に発生し, 脂肪組織の形成と血管形成は非常に密接に関与することが報告されている. 近年, ヒト皮下脂肪組織から間葉系幹細胞に極めて類似した細胞(Procssed Lipoaspirate Cells, PLA)が抽出された. PLA細胞は, 脂肪吸引手術より得られた液状脂肪より分離精製した細胞で, 特別な増殖因子なしで容易に増殖する性質を有する. さらにPLA細胞は脂肪, 骨, 骨格筋といった成熟細胞への分化に必須の転写因子をはじめとする多くの関連遺伝子の発現が確認されている. 臨床的に, 被膜で覆われた頬脂肪体は完全に上皮化することから, 頬脂肪体においても脂肪細胞由来の幹細胞が存在すると考えられる. また, 有茎頬脂肪体挙上時にその被膜を損傷すると, 上皮化の遅延あるいは部分壊死を惹起することから, 頬脂肪体は細胞外マトリックスあるいはScaffoldに包まれていることも示唆される. このことより<頬脂肪体は脂肪細胞由来の幹細胞, 細胞外マトリックス, さらに増殖因子とScaffoldを有する自立的上皮化機能を有する>という仮説に至った.頬脂肪体の上皮化過程で発現する組織修復因子について免疫組織科学的評価とプロテオーム解析を行うことで, 頬脂肪体が自立的上皮化機能を有する再建材料であることを証明すること. 頬脂肪体の上皮化メカニズムを解明し, これが自立的上皮化機能を有する再建材料であることを証明することで, 今後の口腔領域の再建材料の発展と適応範囲の拡大が期待できる.
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