研究実績の概要 |
血管新生の各段階には,血管内皮細胞増殖因子の放出,血管内皮細胞の増殖,線維芽細胞の増殖,血管内皮細胞の遊走などが関与している。昨年度の結果から,ヒト臍帯静脈内皮細胞と正常ヒト皮膚線維芽細胞を共培養したプレートを用いたin vitro血管新生に対して,高濃度ミダゾラム(50 μM)は,血管内皮細胞増殖因子(Vascular endothelial Growth Factor: VEGF)非存在下の3日間のin vitro血管新生を促進し,VEGF存在下では,高濃度ミダゾラムは3日間,10日間のin vitro血管新生を抑制した。また,血管内皮細胞の増殖に対する静脈麻酔薬の影響は昨年度にすでに検討した。 そこで今年度は,線維芽細胞の増殖,血管内皮細胞の遊走について検討した。まず,正常ヒト皮膚線維芽細胞を培養し,48時間の増殖能に対する静脈麻酔薬の影響を,WST-8試薬を用いて検討した。その結果,ミダゾラム(1, 10, 50 μM),ジアゼパム(1, 10, 50 μM),プロポフォール(50 μM),ケタミン(50 μM)は,正常ヒト皮膚線維芽細胞の増殖に影響を及ぼさなかった。次に,ヒト臍帯静脈内皮細胞を培養し,マイグレーションアッセイシステムを使用し,各ウェル上部へ細胞を播種した。ウェル下部の培養液には2%ウシ胎児血清を添加したものと添加していないものを使用し,静脈麻酔薬を作用させる場合には,ウェル上部と下部へ同濃度の静脈麻酔薬を含む培養液を使用した。細胞を播種して22時間後に,ウェル内のメンブラン下部へ遊走した細胞についてCalcien AMで染色した後,専用のプレートリーダーを用いて蛍光度を測定し比較した。ウェル下部に2%ウシ胎児血清を添加すると,有意に細胞遊走が促進したが,50 μMミダゾラムは,ウシ胎児血清により誘導された細胞遊走を有意に抑制した。ミダゾラム(1, 10 μM),ジアゼパム(1, 10, 50 μM),プロポフォール(50 μM),ケタミン(50 μM)は,細胞遊走に影響を与えなかった。
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