研究実績の概要 |
1. 静脈麻酔薬が血管内皮細胞増殖因子(Vascular endothelial growth factor: VEGF)の産生に与える影響について:ラット大動脈平滑筋(A10)細胞を培養し,12時間毎72時間後まで培養細胞の上清液を採取し,上清液中のVEGF蛋白濃度をELISA法により測定した。同様の条件で,ミダゾラム,ジアゼパム(各1, 10, 50, 100 μM),プロポフォール,ケタミン(各1, 10, 100 μM)を作用させた。その結果,ミダゾラムとジアゼパムはVEGF産生を濃度依存性に増加させた。プロポフォールとケタミンは影響を及ぼさなかった。 2. VEGF mRNA発現に対する影響について:ミダゾラム(50 μM)とジアゼパム(50 μM)がA10細胞のVEGF mRNA発現に対する影響をreal time PCR法で検討した。ミダゾラムとジアゼパムは24時間後のVEGF mRNA発現を増加する傾向を示した。 3. デクスメデトミジンが細胞増殖に与える影響について:正常ヒト血管臍帯静脈内皮細胞(Human umbilical vein endothelial cells: HUVEC)および正常ヒト皮膚線維芽細胞(Normal human diploid fibroblasts: NHDF)を培養し,48時間の増殖能に対するデクスメデトミジン(10 nM,100 nM ,1 μM)の影響についてWST-8試薬を用いて検討した。各濃度のデクスメデトミジンはHUVECおよびNHDFの増殖に影響を与えなかった。 4. デクスメデトミジンが細胞遊走に与える影響について:マイグレーションアッセイシステムを使用し,ウェル上部へHUVECを播種した。22時間後に,ウェル下部へ遊走した細胞をCalcien AMで染色し,蛍光度測定により比較した。ウェル下部へ2%ウシ胎児血清(Fetal Bovine Serum: FBS)を添加すると有意に細胞遊走が促進され,デクスメデトミジン(100 nM ,1 μM)は,FBSにより誘導された細胞遊走に影響を与えなかった。
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