研究実績の概要 |
本研究の全体構想は、がん関連口腔粘膜病変の臨床診断基準について検討した。本研究は千葉県立保健医療大学研究棟倫理委員会(2014-005)、日本大学松戸歯学部倫理委員会(承認番号 EC 15-014号)の承認を得て実施された。 がん関連口腔粘膜病変(Oral Oncol, 45:317-323, 2010)に分類される口腔白板症や口腔扁平苔癬等の類似した臨床症状を呈する非典型症例の臨床診断は困難である。本研究では、がん関連口腔粘膜病変を対象とし、液状化検体細胞診(LBC)においてパパニコロウ分類と免疫細胞化学染色を実施し、免疫細胞化学染色における口腔粘膜病変に対する検出能について検討した。また、LBCによる検査の有用性ならびに口腔扁平苔癬の臨床所見と接触拡大粘膜鏡視検査所見、病理組織検査所見について検討した。 従来法細胞診の残余細胞を用いたLBC、病理組織診断を施行した12例を対象とした。免疫細胞化学染色は,CK17、CK10/13、p53を用い、口腔粘膜病変における抗原の発現状態について検討した。対象症例の病理組織診断は口腔平苔癬6例,上皮内腫瘍性病変5例,扁平上皮癌1例であった。免疫細胞化学染色の結果,上皮内腫瘍性病変では異型細胞にCK17陽性所見が認められ、CK13には陽性と陰性が混在した。P53には陰性であった。扁平上皮癌の1例はLBCで細胞量は少ないものの、核異型を伴う表層系異型細胞を検出し、軽度扁平上皮内病変の判定であった。またCK17には陰性で,CK13では染色性の欠失細胞が陽性細胞より多い結果であった。以上の結果から、口腔粘膜病変に対してLBCを用いることにより、異型細胞を検出する可能性が高くなった。また、腫瘍性病変との鑑別にCK17の有用性が示唆された。 LBCは従来法細胞診と比較して上皮内腫瘍性病変を検出する可能性が示唆された。
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