研究課題/領域番号 |
26463074
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研究機関 | 九州歯科大学 |
研究代表者 |
冨永 和宏 九州歯科大学, 歯学部, 教授 (40188793)
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研究分担者 |
土生 学 九州歯科大学, 歯学部, 助教 (00360058)
上原 雅隆 九州歯科大学, 歯学部, 講師 (10253684)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | hTERT / メチル化 / テロメラーゼ / EHA法 / 口腔癌 / 白板症 / スクリーニングシステム |
研究実績の概要 |
悪性腫瘍の罹患者数、死亡者数は年々増加傾向にあり、早期発見・早期治療が重要である。しかし、口腔癌は他の口腔粘膜疾患と所見が類似するものも多く診断に苦慮することも多い。また、前癌病変を診断し、早期に治療することも重要である。ゆえに口腔粘膜疾患の早期診断の一助となるスクリーニングシステムの開発が重要である。 テロメラーゼは染色体末端に存在するテロメア反復配列(TTAGGG)を複製、延長する酵素であり、成人体細胞ではほぼ発現していないが、癌患者の80%以上で高発現している。しかし、テロメラーゼは酵素複合体であり、検体採取から測定まで長時間かかる場合には適さない。そのため、テロメラーゼの構成要素であるhTERTに着目し、同遺伝子のメチル化を指標としたスクリーニングの可能性を検討した。測定には九工大竹中研究室が開発したElectrochemical Hybridization Assay(EHA)を用いた。 検体は本学附属病院を受診し、研究に同意が得られた口腔癌、白板症の患者、健常ボランティアとした。口腔全剥離細胞、病変局所の剥離細胞、手術時に採取した組織をそれぞれ採取し、DNA抽出、亜硫酸処理、メチル化特異的PCR法を行い、EHA法にて測定した。また、免疫染色によりhTERTタンパクの検出を行った。 結果はhTERT遺伝子プロモーター領域のメチル化頻度は正常粘膜→白板症→口腔癌の順で増加した。また、EHA法の結果をもとに疾患群(口腔癌+白板症)と正常粘膜あるいは口腔癌と白板症+正常粘膜を区別するためRCO解析を行った結果、それぞれのカットオフ値wを定めることで高い感度と特異度を得た。また、hTERTタンパク発現量はhTERTプロモーターのメチル化頻度と相関がみられた。 以上より、口腔癌におけるhTERT遺伝子の異常メチル化頻度は口腔癌のスクリーニングシステムとして有用であると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
正常口腔粘膜→前癌病変(白板症)→口腔癌の順でhTERT遺伝子プロモーター領域のメチル化頻度が増加していることを示すことができた。また、免疫染色によりhTERTタンパクの検出を行い、同遺伝子とのメチル化との関係を調べた結果、両者の間に相関関係を認め、hTERT遺伝子プロモーター領域のメチル化によりhTERTタンパク発現が引き起こされる可能性を示すことができた。 このようにおおむね仮説通りの結果を得ることができている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は検体数をさらに増やして検討する予定である。また、前癌病変である白板症において、異形成の有無でのhTERTタンパク発現の違いやhTERT遺伝子プロモーターにおけるメチル化の違いについて検討していく予定である。加えて、口腔癌においてもhTERTタンパク発現量や同遺伝子プロモーター領域のメチル化頻度と臨床病理学的所見や予後との関係についても検討していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
九州工業大学所有の機器を使える機会が多く、試薬も共用したたため、予定の支出額に達しなかった。しかし、研究成果はほぼ予定通り出てきており、今後、免疫組織染色との関連にも一定の成果を得た。
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次年度使用額の使用計画 |
検体数を増やし、hTERTの異常メチル化と臨床病理的関連性について検証を進める。また、癌以外の口腔粘膜疾患に対する電気化学的ハイブリダイゼーションアッセイの反応性を確認し、偽陽性の出現についても検討するとともに、前癌病変における反応性も確認する。
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