研究課題
テロメラーゼはヒト癌の80%以上に発現しており、その活性はhTERT発現により調節され、また、hTERT発現は、同遺伝子プロモーター領域の異常メチル化により引き起こされると報告されている。テロメラーゼは酵素複合体であり、テロメラーゼを対象とした癌スクリーニングシステムでは、検体採取後直ちに測定しなければならず、一般臨床には適応しづらいと考えられる。そのため今回は安定性の高いhTERT遺伝子プロモーター領域のCpG部位における異常メチル化を指標としたスクリーニングの可能性を検討した。また、hTERTタンパク発現を免疫組織学的に検出し、メチル化との相関を評価した。対象は、本学附属病院口腔外科を受診し、本研究に同意が得られた口腔癌(OSCC)、白板症(OL)を有する患者と正常口腔粘膜(NOM)を有する健常ボランティアとした。検体は口腔内全体を拭って採取された剥離細胞と病変局所からの剥離細胞、病変から採取した組織とした。各検体からDNAを抽出、亜硫酸処理しPCRで増幅したのち、hTERT遺伝子のメチル化頻度を測定した。測定には九州工業大学竹中研究室が開発したElectrochemical Hybridization Assayを用いた。また、免疫染色によりhTERTタンパクの発現を調べた。結果はOSCC患者ではNOMと比較し、hTERT遺伝子のCpG部位における異常メチル化が高率に見られた。OL患者はOSCC患者と健常者の中間を示した。疾患群(OSCC + OL)とNOMあるいはOSCCとそれ以外の患者群(OL + NOM)の識別を行うためにROC解析を行った結果、高い正診率を示した。また、hTERTタンパク発現とhTERT遺伝子の異常メチル化は有意な相関関係を示した。口腔癌におけるhTERT遺伝子の異常メチル化は口腔癌のスクリーニングシステムとして有用である可能性が示唆された。
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Electroanalysis
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10.1002/elan.201700028
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