研究実績の概要 |
全身麻酔の際の経口挿管では,気管チューブと口腔粘膜との接触が避けられないことから,気管チューブに付着した口腔細菌の気道内侵入により,術後感染症を引き起こす可能性がある.そのため術前の口腔ケアの重要性が指摘されているものの,気管チューブに付着した口腔細菌種についての詳細や口腔ケアとの関連性については明らかにされていない.初年度の研究では,全身麻酔時に経口挿管した気管チューブに付着した細菌数と菌種について検討し,さらに口腔ケア(PMTC)との関連性について検討を行った. 対象は,本学附属病院における経口気管挿管の施行を前提とした全身麻酔下手術予定患者(53名)とした.対象者全員に,歯式,プラーク付着状態などの口腔内診査を行い,口腔ケア実施群(20名)では,手術1週間前と手術前日にTBI,スケーリング,歯面研磨を行った.また,対象者全員から手術当日の起床直後の唾液1mlを採取した.抜管した気管チューブはVortex mixingし,遠心分離により付着細菌を回収した.また唾液由来口腔細菌は遠心分離により回収した.回収された細菌は段階希釈後,5%ヒツジ血液寒天培地およびMitis-Salivarius(MS)寒天培地に藩種し,嫌気的条件下で37℃,48時間培養後,血液寒天培地に生育したコロニー数を総細菌数,MS寒天培地生育したコロニー数を口腔レンサ球菌数として計測した. その結果,口腔ケア実施群では,非実施群と比較して気管チューブに付着した総細菌数およびレンサ球菌数が有意に低かった.一方,チューブに付着する総細菌数・口腔レンサ球菌数と唾液中のそれとはいずれも有意な相関関係が得られなかったことから気管チューブへの付着細菌数と唾液中の細菌数とは関連しないことが示唆された.
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