研究課題/領域番号 |
26463079
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研究機関 | 朝日大学 |
研究代表者 |
櫻井 学 朝日大学, 歯学部, 教授 (50225843)
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研究分担者 |
宮脇 卓也 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (00219825)
松浦 信幸 東京歯科大学, 歯学部, 講師 (20408313)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ミダゾラム / フルマゼニル / アデノシン / アミノフィリン |
研究実績の概要 |
ミダゾラム鎮静中にフルマゼニルを投与し鎮静を拮抗させ,その後鎮静からの回復および再鎮静の程度を観察した. 有志の男性6人を対象とし,同一被検者で4回のtrial施行し評価した.Trial 1:ミダゾラム0.1mg/kgを静脈内投与.Trial 2:ミダゾラム0.1mg/kg投与30分後にフルマゼニル0.2mgを投与.Trial 3:ミダゾラム0.1mg/kg投与30分後にフルマゼニル0.5mgを投与.Trial 4:ミダゾラム0.1mg/kg投与30分後にフルマゼニル1mgを投与.観察項目は鎮静レベル(脳波スペクトル分析装置の値;BIS値から鎮静状態の評価,および指示に対する反応の有無により覚醒か催眠状態にあるかを評価),鎮静からの回復状態(認識力,精神運動機能,平衡機能),循環(心拍数,血圧,心電図),呼吸(呼吸数,1回換気量,分時換気量,終末呼気炭酸ガス濃度,経皮的動脈血酸素飽和度)とし,5分間隔に180分間観察した.認識力,精神運動機能は,鎮静開始前,開始後40分,60分,90分,120分,150分,180分に記録した. BISでの評価では,フルマゼニル非投与では鎮静状態から緩徐に回復し,ミダゾラム投与後130分に鎮静前の値に回復した.またフルマゼニル0.2mg投与では,フルマゼニル投与直後BIS値は上昇したが,鎮静前値にまでの回復には130分を要した.一方,フルマゼニル0.5mg,1mg投与では,フルマゼニル投与直後にBIS値が高値を示し,一過性に投与前との差はなくなったがその後低下し,鎮静前値にまでの回復にそれぞれ160分,170分を要した.他の評価(指示に対する反応,認識力)でもフルマゼニル0.5mg,1mg投与では,一時的に回復するがその後再抑制が認められ,回復までフルマゼニル0.5mg投与では150分,フルマゼニル1mgでは160分要した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度の中等度量(0.06mg/kg)のミダゾラム投与同様に,ミダゾラム0.1mg/kgも単独投与では,鎮静状態から緩徐に回復するが,その後の再鎮静は認められなかった.一方,ベンゾジアゼピン系薬物の拮抗薬であるフルマゼニルは,投与直後に鎮静からの急激に鎮静状態からの回復が認められ,特にその投与量が多いほど回復度が高い傾向にあった.しかし,その後,再鎮静が認められ,鎮静からの回復はフルマゼニルの投与量が多いほど遅れた.これは予想通りの結果であり,ミダゾラムもフルマゼニルも中枢でのアデノシンを量依存的に増加させ,アデノシンによる催眠効果により再鎮静が生じたることが予想される. また,アデノシンは循環への効果発現は速いが,催眠・鎮痛効果の発現は遅くいことから,今回のような遅延型の鎮静が生じたと考えられる.つまり,フルマゼニルはベンゾジアゼピン受容体を拮抗するため一過性に鎮静から回復させるが,増加したアデノシンの効果が徐々に現れ,長時間持続することから鎮静からの回復が遅延した可能性がある
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今後の研究の推進方策 |
ミダゾラムおよびフルマゼニルは両者とも中枢でのアデノシン量を増加させるので,両者の投与量の総量が増すほど再鎮静の程度が強くなること,および再鎮静の原因が中枢でのアデノシンの増加によることを証明するために,アデノシン受容体の拮抗作用を有するアミノフィリンを投与し,フルマゼニル投与後のミダゾラム再鎮静が,フルマゼニルでは拮抗できず,アミノフィリンにより拮抗されることを確認する. 平成28年度も平成26年度,27年度と同様の項目を180分間観察する. Trial 1 :ミダゾラム0.1mg/kg投与30分後にフルマゼニル1mgを投与し,再鎮静の認められるミダゾラム投与後120分にフルマゼニル0.2mg投与.Trial 2 :ミダゾラム0.1mg/kg投与30分後にフルマゼニル1mgを投与し,再鎮静の認められるミダゾラム投与後120分にアミノフィリン2mg/㎏投与する.
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次年度使用額が生じた理由 |
大学施設で使用可能の物品があり,予算を下回った.
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次年度使用額の使用計画 |
最終年度にあたり,印刷代,消耗品として用いる.
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