研究課題/領域番号 |
26463081
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研究機関 | 大阪教育大学 |
研究代表者 |
宮前 雅見 大阪教育大学, 学内共同利用施設等, 教授 (20298821)
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研究分担者 |
竹村 元三 朝日大学, 歯学部, 教授 (40283311)
金田 一弘 大阪歯科大学, 歯学部, その他 (90533886)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ischemia-reperfusion / heart / sevofllurane / ubiqitin system / autophagy |
研究実績の概要 |
今年度は研究代表者である宮前の所属機関変更に伴い、研究設備の設置、実験体制作りに時間を要したため十分な研究実績を出すことが難しかった。次年度は鋭意努力し実績を作る予定である。共同研究者である竹村との研究はある程度成果が出ている。小さな蛋白質を処理するユビキチン・プロテアゾーム系と大きな細胞内器官をリソゾームを介して貪食するオートファジーは密接な関係にある。そこで、心筋のオートファジー反応が糖尿病1型と2型で異なることを報告した。Streptozotocinで誘導した1型及びdb/db 2型糖尿病マウスを用い、心機能(拡張能)とオートファジーの指標であるLC II/I比、cathepsin D、AMP-activated protein kinase (AMPK) activityおよび心筋組織を電子顕微鏡にて検討した。オートファジー阻害剤であるchloroquineを投与すると1型糖尿病では心筋拡張能が悪化した。2型糖尿病では1型に比べautophagic vacuolesがたくさん見られるにもかかわらず、LC II/I比、cathepsin D、AMPK activityは低下し、リソゾームはほとんどみられなかった。これらは2型糖尿病ではオートファジー反応が消化の最終段階で抑制されていることを意味する。一方、オートファジーの増強剤であるresveratrolの投与では心筋拡張能は改善し、1型糖尿病ではオートファジー反応は増強されていたが、2型糖尿病では抑制されていた。これらの所見は糖尿病性心筋症の生態病理の解明と新薬の開発につながるものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究代表者である宮前の所属機関変更に伴い、研究設備の設置、実験体制作りに時間を要したため十分な研究実績を出すことが難しかった。
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今後の研究の推進方策 |
近年、ユビキチン修飾がエンドサイトーシス・DNA 修飾・翻訳調節・ シグナル伝達などさまざまな生命現象に関わることが判明している。オートファジーと UPS は心 筋のホメオスターシス維持に多面的な役割を果たしていると考えられている。Su らは病的な蛋白質異常が生じるとオートファジーと ubiquitin proteasome system (UPS) は並行して活性化するか、または一方が阻害されると 代償的にどちらかが活性化することを報告した(Su et. al Cardiovasc Res 2010)。 ischemic preconditioning ではオートファジーは保護的に働くとの報告が多いが、UPS についての報告はほとんど見られない。これまでの 報告では proteasome inhibitor である PS-519 の投与が好中球の内皮細胞への粘着や NFκB の translocation が抑制され、細胞保護的に働くとされている。しかし、IPC においては、UPS が心筋 虚血再灌流後に pro-apoptotic protein の分解を促進する可能性が示唆されている。これは我々 が報告した、セボフルランを虚血再灌流直後に投与することでアポトーシスに関与する caspase 3, 9 の活性化阻止を介して梗塞サイズを縮小できる(Inamura, Miyamae et al. J Anesth 24:215-224, 2010)という結果と合致する。しかし、UPS が揮発性麻酔薬による虚血心筋保護にどのように関 与するかの詳細はほとんどわかっていない。アポトーシスとオートファジー、UPS は密接に関連 することから、セボフルランの心筋保護において UPS がどのように作用しているかを明らかにし たい。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者である宮前の所属機関変更により、研究計画に遅延が出たため次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額が生じた分、今年度は遅延した実験を取り戻すべく研究計画を進める方針である。
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