研究課題/領域番号 |
26463081
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研究機関 | 大阪教育大学 |
研究代表者 |
宮前 雅見 大阪教育大学, 保健センター, 教授 (20298821)
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研究分担者 |
竹村 元三 朝日大学, 歯学部, 教授 (40283311)
金田 一弘 大阪歯科大学, 歯学部, 講師(非常勤) (90533886)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ischemia-reperfusion / heart / autophagy / sevoflurane / ubiquitin / proteasome |
研究実績の概要 |
[目的] Ubiquitin proteasome system (UPS) はリソゾームを介さない細胞内の異常タンパク質を処理する経路である。オートファジーがミトコンドリアなどの大きな細胞内器官をリソゾームを介して貪食するのに対して、小さいタンパク質はUPSにより修飾を受け分解される。近年、ユビキチン修飾がエンドサイトーシス・DNA修飾・翻訳調節・シグナル伝達などさまざまな生命現象に関わっていることが判明している。本研究の目的は、臨床で用いられる揮発性麻酔薬(sevoflurane)の心筋保護作用におけるUPSの役割を明らかにし、全身麻酔時における周術期心筋保護に最も有効な麻酔方法の確立を分子生物学的手法により解明することである。 [方法]モルモット灌流心で30分間の虚血後120分間再灌流(IR)を行った群(CTL, n=8)、CLTにSevo(2%)を虚血前10分間投与した群(SEVO, n=8)の 2群を作製した。これらの群で再灌流後の左心室機能、梗塞サイズ(IS)を比較した。また、虚血再灌流後に心筋を採取し、ubiquitinとUPSと密接な関係があるオートファジー関連蛋白質(LC3、p62)を免疫組織染色法にて検討した。 [結果]ISはSEVO群でCTL群に比べて有意に縮小した。免疫組織染色ではSEVO群ではCTL群に比べてミオグロビン陰性細胞が有意に少なく、ubiquitin, LC3の染色強度が有意に強かった。また、p62は両群で染色強度は強かった。 [考察]心筋虚血再灌流前にsevofluraneを投与することによりオートファジーとともにUPSも増強され、これが虚血心筋保護に関与していると考えられる。CTL群ではオートファジー消化段階での遅延が考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究代表者である宮前の所属機関変更に伴い計画は遅延している。このため研究期間の延長を申し出た。オートファジーが虚血心筋に対して保護的に働くのか傷害的かについては未だ意見の一致を見ていない。我々の今年度得られたデータからは明らかに保護的であることが判明した。同様にUPSについても詳細には判明していない。今回の免疫組織染色法によるubiquitin染色強度増強からはsevofluraneによりUPSの亢進が考えられ、目的の一部は達成できたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
揮発性麻酔薬であるsevofluraneの虚血心筋保護作用においてオートファジーが関与していると考えられる。またこれと密接に関連するUPSの関与も今回の結果から考えられ、今後はこのメカニズムの詳細な解明に全力を注ぐ予定である。このメカニズムが解明されれば冠動脈疾患を有する患者の周術期の管理に大きな戦略の一つとなる。オートファジーの最も大きな指標であるオートファゴゾームの出現度を電子顕微鏡にて観察する。また、蛋白aggregationが2群でどのような変化をするのかを検討する。これらの発現と梗塞サイズの関係を明らかにする。さらに、これまで提唱されている心筋保護のメカニズムの中で特にミトコンドリアを中心に研究を進めて行く予定である。ミトコンドリアの生死に大きく関与するmitochondrial permeability transition pore (MPTP)の開口に関して詳細に検討する。特にオートファジー、UPSがミトコンドリアMPTP開口にどのように関与するのかを明らかにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年に研究代表者である宮前の所属機関が変更となった。このため研究設備の設置、実験体制作りに時間を要したため研究に遅れが生じた。しかし、共同研究者である竹村との研究はある程度成果が出ている。次年度は鋭意努力し成果を出す予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
今後もモルモットを使用して心筋サンプルを採取しタンパク発現などを詳細に検討する。これらの動物の購入(約100匹、1匹;6000円)に研究費を使用する。さらに,オートファジー、UPSに関与する蛋白の発現とオートファゴゾームの出現を電顕で検討するための試薬,抗体に研究費を使用する予定である。また,その成果を国内学会(日本麻酔科学会)、国際学会(アメリカ)で発表する旅費や資料作成に研究費を使用する。
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