研究課題/領域番号 |
26463085
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大久保 和美 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (10396715)
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研究分担者 |
岡安 麻里 東京大学, 医学部附属病院, 特任臨床医 (10610941)
星 和人 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (30344451)
西條 英人 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (80372390)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | SCF徐放化 / SCF含有FGF2徐放化製剤 / 骨髄微小環境形成 / 幹細胞動員 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、高効率で確実な骨再生を実現するために、間葉系と造血系の両幹細胞の相互作用を活用して骨形成の促進と維持を実現する方法を確立し、歯科矯正への応用を目指すことであある。申請者らは、間葉-造血相互作用を用いた新たな歯槽骨増量法を確立し、これを歯槽骨に導入することにより、歯の移動やインプラント植立が安定的に施行できる、従来にはなかった高効率の骨再生を実現できると仮説を立て、前年度までに効果的な幹細胞動員を促進するFGF2/PLGA製剤を作製し、動員された幹細胞の添加骨への定着、維持を促進するSCF濃度をin vitroにて評価をおこなった。この結果を基に、生体内投与に必要なSCF濃度を推計し、SCF徐放製剤を作製した。本年度は、前年度までに決定したSCFとFGF2コンポジットPLGAをin vivo評価によって効果を検証した。FGF2徐放化製剤ならびにSCF徐放化製剤の合計50 mgに対し100 μLの生理食塩水を加えスラリー状にして、マウス頭蓋骨膜下へ移植し、骨形成を評価した。FGF-2/SCF混合比は、100:0、99:1、90:10、50:50、0:100を検討した。移植後4、8、12週で頭蓋を摘出し、骨塩定量、3D-μCTによる骨形態評価、摘出組織の一部から蛋白質を抽出し、CXCL12、CXCR4蛋白量を定量、また、組織切片を作製し、組織学的、免疫組織学的に評価した。骨髄における幹細胞の変化は、間葉系幹細胞はCD45(-), PDGFR-1α, Sca-1を、造血幹細胞はCD34, CD150を免疫組織化学的に観察し、造血幹細胞刺激シグナルの変化としてCXCL12 ELISAを用いて生化学的に評価した。以上の結果から、形成された骨において十分な骨質・骨量を形成し、最終的に幹細胞維持を実現する骨髄微小環境形成が良好なSCF含有FGF-2徐放化製剤を決定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウス頭蓋骨膜下移植実験において、SCF含有FGF2徐放化製剤の評価をおこなったが、製剤の漏えいや流出により骨膜下に製剤を保持することが困難であり、安定的な結果を取得することができない事象が生じた。原因として、マウス骨膜が非常に菲薄であったため、縫合時にばらつきがあったために生じたものと考え、切開を上皮、上皮下粘膜、骨膜と段階的行うことで、骨膜を明示し、また縫合糸を4-0から6-0にすることで、改善をおこなった。原因究明に時間と技術改善に時間を要したが、SCF含有FGF2徐放化製剤の幹細胞動員および添加骨への定着、維持の評価に関しては当初の計画通り遂行されていると考える。
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今後の研究の推進方策 |
H28年度は最終年度であるため、計画の集大成となる成果を見込んでいる。前年度までのマウスでの検討、評価により得た成果を、ラットでも再現できることを確認し、また、最終的な臨床応用を念頭にしたラット抜歯窩モデルに対しても、製剤を移植した時の効果を形態学的、組織学的に評価をおこなう。これらの結果をもとに、実際に、強制力を用いた歯の移動が可能かどうか、あるいは歯を移動することができるようになる適正なタイミングを移動に必要な強制力の評価を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
H27年度実施研究において、SCF含有FGF2徐放化製剤のin vivo評価に対し、動物への移植実験を実施したが、技術的な問題から当初予定より時間を要したことから、当初使用予定であったSCFおよびFGF2の因子や抗体等の試薬の使用量が減少したことによる、購入費用が減じたため。 また、参加予定であった学会、打合せの欠席にともなって、結果として助成金の繰り越しにつながったと考える。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度繰り越しに関しては、前年度購入予定だった試薬の購入に充当させること、また、次年度は動物実験を控えているため、動物購入費用に充当させることにより、繰り越し分を償却できるものと考える。
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