研究課題/領域番号 |
26463101
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
清水 典佳 日本大学, 歯学部, 教授 (40154299)
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研究分担者 |
馬谷原 琴枝 日本大学, 歯学部, 助教 (60440046)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 脱分化脂肪細胞 / 正中口蓋縫合 / 骨形成促進 / マイクロCT / LLLT |
研究実績の概要 |
上顎劣成長患者の歯列を急速側拡大した後に、顕著な後戻りをすることが知られており、拡大した縫合部にDFATを移植し早期に骨形成を誘導することで、後戻りを抑制することを目的とした。 DFAT採取:8 週齢F344 / Jcl Fisher 系雄性ラットの鼠徑部の脂肪細胞 1.0 gを採取、細切し0.02 % コラゲナーゼ処理後低速で遠心沈殿させ上澄を採取し、20 % FBSを添加した培養液を満たしたフラスコ内で天井培養した。1 週後フラスコを反転させ培地を交換し、底面にDFATの増殖が見られたため、継代培養しDFATを得た。 DFAT移植:8 週齢同系雄性ラットの上顎切歯間に1.5mm厚の金属リングを圧入し、上顎正中口蓋縫合を急速拡大し、DFAT (5000個)をPura Matrix(Corning)ゲル0.1mlに混ぜ、口蓋縫合部粘膜下にG29注射針を用いて投与した。拡大時から1週おきにmicro CTで口蓋縫合部を撮影し、骨形成量を4週間にわたり比較検討した。対照群(無処置)、拡大群、拡大+DFAT移植群、拡大+DFAT移植+LLLT照射群、の4群に分け、LLLTは長田ライトサージ3000半導体レーザーを用い、拡大後口蓋粘膜に光ファイバーで0.1W、10分間1回照射を行った。 拡大直後のmicro CT画像とその後に撮影した画像の同一領域を差分法により解析したところ、拡大群では1週で-2500ボクセル(BX)に減少し3週でほぼ0に回復しており、4週でも変化はなかった。DFAT移植群では、1週で-3000BXに減少し、3週でほぼ0で、4週では+2000BXに増大した。拡大した縫合部骨形成量はDFAT移植群で増加していると考えられるが、サンプル数が少なく、今後n数を増やし統計的な検討を行う。レーザー照射群では明瞭な差が見られなかったため、照射時期と照射量の検討が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
多量のDFATを獲得する条件は見いだせた。そこで採取したDFATを用い半導体レーザー照射した後、骨芽細胞分化マーカーの遺伝子発現とbone nodule形成を検討しているが、遺伝子発現が亢進する場合と、変化がない場合があり、DFATへのレーザー照射条件が十分に定まっていない。そのため、このin vitroの研究がやや遅れている。 そこで、in vitroのレーザー照射実験を継続すると共に、ラット正中口蓋縫合拡大時のDFAT移植実験を前倒しして行った。ラットの正中口蓋縫合拡大とその後4Wに渡るmicro CT撮影の手技は獲得できたが、各個体のデーターにばらつきがあり、正中口蓋縫合拡大時やDFAT移植時等で手技的な差異があった可能性がある。また、ラット口蓋部へのレーザー照射手技も獲得できた。DFAT移植実験では、拡大した縫合部の骨形成促進の可能性が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
引き続きDFATへの半導体レーザー照射後の骨芽細胞分化マーカーの遺伝子発現とbone nodule形成を検討し、DFATから骨芽細胞へ分化を促進するレーザー照射条件を見出す。 一方、ラットの正中口蓋縫合拡大部位へのDFAT移植実験では、各個体のデーターにばらつきがあった。そこで、縫合拡大時やDFAT移植時等の操作手技を一定にするため、一人の実験者に担当させることとする。。この条件でDFAT移植実験を行い、撮影したmicro CT画像から差分法を用い、縫合部拡大後の縫合部骨量減少から骨形成による縫合部骨修復の径日的なデーターを解析し、統計的手法を用いDFAT移植による骨形成促進作用を定量的に評価する。また、in vitroのレーザー照射実験で骨芽細胞への分化誘導条件が見出せたら、DFAT移植実験にレーザー照射実験を加え同様な検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
採取したDFATを用い半導体レーザー照射した後、骨芽細胞分化マーカーの遺伝子発現とbone nodule形成を検討したが、遺伝子発現が亢進する場合と、変化がない場合があり、DFATへのレーザー照射条件が十分に定まっていない。照射条件を決定するのに手間どってその後の研究があまり進展しなかったため、予定していた試薬等の購入を延期したため。
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次年度使用額の使用計画 |
来年度においてもin vitroの条件でDFATへのレーザー照射による骨芽細胞への分化促進作用を、骨芽細胞分化マーカーの遺伝子発現とbone nodule 形成によるカルシウム定量により検討する予定である。そのため実験計画の大きな変更はなく、今年度予定した一部の試薬は今後必要にあるため、来年度に購入し上記実験を継続する予定である。
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