研究実績の概要 |
平成26年度、27年度の研究では、1. HSPA1Aのヒト歯根膜線維芽細胞に対する炎症性サイトカインへの影響の解明(in vitro)および、2. HSPA1Aの機能抑制を行った際の矯正学的歯の移動への影響をラットも用いて検討を行った(in vivo)。 1.細胞外のHSPA1Aは培養ヒト歯根膜線維芽細胞のToll様受容体4に結合し、細胞内シグナル分子であるNFκB p65のリン酸化を介してIL6,IL8およびTNF-αなどの炎症性サイトカインの発現を誘導する可能性が示唆された。本研究結果は、第74回日本矯正歯科学会大会で発表した。 2.12週齢Wistar系雄性ラット(n=12)の上顎第一臼歯をニッケルチタン製のスプリングを用いて10gの力で移動した。実験群には移動開始前日にHSPA1Aの機能抑制分子であるPifithrin-μ(3mg/kg)を、対照群には偽薬を腹腔内に投与した。移動開始1週、2週にマイクロCTを撮影し、移動距離の計測を行った。結果として、実験群では歯の移動距離が有意に減少することが明らかになった。 平成28年度は、上記1の実験について、複数回の再現実験を行った後に論文を執筆し、現在海外誌に投稿中である。2について、上顎骨を脱灰後、パラフィン包埋を行い、薄切切片を作製、HE染色およびTRAP染色を行い、形態観察及び破骨細胞数の計測を行った。また、同様の手法で、歯の移動開始から6時間後および24時間後の試料を作製し、IL6,IL8およびTNF-αの発現を、免疫染色を行い、現在に至るまで評価を行っている。
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