研究課題/領域番号 |
26463103
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研究機関 | 鶴見大学 |
研究代表者 |
福井 只美 鶴見大学, 歯学部, 非常勤講師 (10267544)
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研究分担者 |
安藤 準 鶴見大学, 歯学部, 講師 (00282765)
大久保 力廣 鶴見大学, 歯学部, 教授 (10223760)
成山 明具美 鶴見大学, 歯学部, 助教 (90440304)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 舌 / 発生 / エピジェネティクス / 舌筋 / 再生 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は多能性細胞から舌筋細胞への分化の際のエピジェネティクスによる分化調節機序を明らかにすることである。舌は上縦舌筋、横舌筋、垂直舌筋など様々な形質、配列方向をもつ多様な筋管細胞で構成されている。これまでに多能性幹細胞から筋芽細胞への分化誘導系は幾つか報告されているものの、現時点でも舌筋のような多様な筋管細胞への分化誘導には至っていない。そこで、エピジェネティクスによる分化調節機序の解明という本来の目的に基づき、昨年度までに引き続き胎生期において多能性幹細胞から舌筋細胞へin vivoでの分化過程におけるエピジェネティクス調節の機構を調べた。平成27年度までに、舌でのヒストンH3の9番目のリジン残基のメチル化酵素G9aの発現局在と、その修飾産物であるH3K9me2の特異的局在を明らかにした。さらに、Rosa26-lacZ;Sox9-Creマウスの解析から、Sox9発現細胞が舌筋を構成する多くの筋管形成に参加している事、G9a flox/flox;Sox9-Cre(G9acKO)マウスでの舌の矮小化を認めた。そこで今年度は、G9a cKOマウスと野生型マウスの舌で比較解析をおこなった。まず、G9aの修飾産物であるH3K9me2のレベルを調べたところ、G9a cKOマウスの舌でG9a欠損に伴ったレベルの低下が認められた。次に、HE染色にて舌筋の構造を比較したところ、G9a cKOマウスの舌筋管に配向の乱れが認められた。また、舌筋細胞の増殖をBrdU法で、アポトーシスをTUNELアッセイで調べたところ、どちらにも顕著な差は認められなかった。さらに、単位面積当たりの細胞数を比較したところG9a cKOマウスが野生型に比して多い事が分かった。これらの結果は、舌を構成する筋管の細胞分化過程にヒストンメチル化酵素G9aおよびH3K9me2修飾レベルが関与する可能性を示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
in vitroの予備的検討ではiPS 細胞が舌筋の分化マーカー発現が誘導できる可能性が示されていたが、in vivoで多様な舌筋細胞への再生分化を誘導できる実験系の確立にまで至っていない。これは、舌筋細胞が多様である事と、多能性幹細胞から分化誘導に必要なファクターが明らかではないためである。本研究では舌筋細胞への分化誘導にはエピジェネティクスによる調節が必要なファクターであると考え、その機序の解明を目的としている。そこで胎児期における舌筋の解析に焦点を絞り、現在までにG9a cKOマウスの解析からエピジェネティックな変化が舌筋細胞の分化過程に関与する可能性を得るに至った。
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今後の研究の推進方策 |
G9a cKOマウスの矮小化した舌の解析から、G9aの機能、H3K9me2レベルが舌筋の形成に必要であることが示唆された。今後は、舌筋の分化過程におよぼすG9aの機能に焦点をしぼり、舌筋の分化や発生に関わる遺伝子発現を解析する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
舌筋細胞の増殖およびアポトーシスの解析手法の条件検討、サンプリング等に時間を要し、実験の進行が遅れたため。
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次年度使用額の使用計画 |
G9a欠損による舌筋細胞の分化過程の遺伝子発現、エピジェネティクスの変動を解析するための分子生物学試薬を購入する予定である。
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