研究課題
う蝕が重度に進行し歯髄に達すると、歯髄炎を惹起し、歯髄処置が行われる。神経は再生しないと考えられていたが、最近の再生医療研究の発展により、神経幹細胞から神経が再生することが徐々に判ってきた。う蝕に罹患した乳歯歯髄を対象として、今までは廃棄されてきた歯髄内の神経細胞から神経幹細胞が得られれば、in vitroで増やし、神経細胞への分化誘導をはかり、自家移植することで機能的な根管充填材として使用するテーラーメイド医療が可能となる。本研究は、廃棄歯髄から幹細胞を遺伝子工学的に濃縮する方法を確立し、特性解析、in vivo での機能性検定を通じ、当該細胞が歯再生への有効な資材となり得ることを証明することを目的とした。ヒト乳歯歯髄由来の初代培養細胞への遺伝子導入、それによる遺伝子機能の解析は、あまり行われていない。これまで、当該細胞への効率的遺伝子導入系が検討されていなかったことが背景にあると思われる。Piggy Bac(PB)トランスポゾンによる遺伝子導入法は、哺乳類細胞でも効率よく外来性の遺伝子導入を達成でき、当該遺伝子が宿主ゲノムに挿入された遺伝子導入安定株を通常の系よりも効率良く取得できる。今回、この方法を乳歯歯髄細胞に適用した。その結果、プラスミドだけの導入では安定株が得られなかったものが、PB系では確実に取得することが出来た。PB系を用いた乳歯歯髄細胞およびiPS細胞への遺伝子導入により、遺伝子導入安定株は効率的に取得できることが明らかとなった。また、乳歯歯髄細胞から歯髄幹細胞を遺伝子工学的に単離し、その幹細胞特性について検討したところ、神経幹細胞特異的マーカーの遺伝子発現を認めた。in vitroにて分化誘導を行ったところ、神経細胞様の細胞を認めた。今後、神経再生のための効率的な分化誘導法の検討を行っていく必要があると考えられた。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (1件) (うち謝辞記載あり 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
Archives of Oral Biology
巻: 印刷中 ページ: -