研究課題
根尖の直径は、歯の再植/移植後の歯髄再生過程に重要な因子である。過去の研究では、根尖切除が再植歯の歯髄組織の血管新生を改善する手法として推奨されている。しかしながら、根尖孔の拡大が血管新生に有効に働き、その後の歯髄組織の治癒を良好にするかどうかは、大型動物を用いた実験で相反する結果が報告されている。本研究の目的は、歯の再植モデルを用いて、根尖孔の拡大の歯髄治癒過程に及ぼす効果を解析した。3週齢ICRマウスの上顎第1臼歯の抜去後、実験群では歯の再植前に歯根を半分に短くした。一方、対照群では抜去歯は歯槽窩にそのままに戻した。術後1、3、5、7、14日後に深麻酔科で動物をアルデヒド系固定液で灌流固定し、パラフィン切片を作製し、H&E染色、ネスチン及びKi67免疫組織化学、TUNEL評価、酒石酸抵抗性酸性フォスファターゼ(TRAP)酵素組織化学を行った。実験群では、術後2週間後にネスチン陽性反応が現れ、多量の第3象牙質形成が観察された(100%)。対照群では、象牙質形成(40%)、象牙質・骨形成混在型(60%)など多様な治癒パターンを示した。細胞増殖活性については、術後3日と7日で、歯根部において、実験群が有意に高かった。また、術後3日と14日で、実験群で有意にアポトーシス細胞が少なかった。結論として、歯根切除は、再植歯の血管新生に有利な環境を提供することにより、再植後の歯髄再生を促進することが明らかになった。実験群では、術後3日でアポトーシスが消退して、その後活発な細胞増殖が続き、対照群よりも早く新たに分化した象牙芽細胞様細胞が観察された。歯周組織治癒については、両群間で差はなかった。
2: おおむね順調に進展している
予定した実験計画通りに進行している。
(1) 抗菌性薬剤(3Mix)を用いた外傷歯の歯髄再生療法の基盤研究3 週齢マウス上顎第一臼歯を抜去し、抜去歯を生食に1時間浸漬後に再植を行うと、象牙質形成を誘導できなかったのに対し、3Mix 溶液(Metronidazole 0.2 mg+Ciprofloxacine 0.1 mg+Minocycline 0.1 mg in DW 10 ml)に1 時間浸した場合、歯髄内に効率良く象牙質形成を(2 週間で)誘導することに成功した。しかしながら、歯根膜には為害作用があり、アンキローシスを惹起した。そこで、抜歯後に歯根を切除し、3Mixが効率よく歯髄に作用する環境をつくり、アンキローシスを惹起しない3Mix浸漬条件(濃度、時間)を検討する。術後1日から2週間後にマウスを固定し、試料は脱灰後通法に従いパラフィン切片を作製し、象牙芽細胞分化マーカー(ネスチン)、細胞増殖活性マーカー(Ki67)、に対する免疫組織化学を行う。さらに、アポトーシス染色(TUNEL法)、TRAP酵素組織化学を行う。なお、歯根を切除しないで再植した左側臼歯を対照群とする。(2) 歯根切除後の移植歯におけるホスト・ドナー相互作用についてGFPマウスをホストまたはドナーとして他家移植を行い、歯根切除が歯の移植後のドナー・ホスト相互作用に及ぼす影響を検索する。3 週齢GFPマウス上顎第1臼歯の抜去後、実験群では歯の再植前に歯根を半分に短くし移植した。一方、対照群では抜去歯は歯槽窩にそのままに移植した。野生型抜歯窩へ移植する。野生型マウス上顎第一臼歯は抜去後、GFPマウス抜歯窩へ移植する。術後1、3、5、7、14日後に深麻酔科で動物をアルデヒド系固定液で灌流固定し、パラフィン切片を作製し、H&E染色、ネスチン及びKi67免疫組織化学、TUNEL評価、酒石酸抵抗性酸性フォスファターゼ(TRAP)酵素組織化学を行う。
3月末に次年度の研究打ち合わせのために出張したが、精算が当該年度内に計上されなかったため。
ほぼ予定通り支出しており、次年度の使用計画に変更は生じない。
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