研究課題/領域番号 |
26463112
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
岡橋 暢夫 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 准教授 (40150180)
|
研究分担者 |
中田 匡宣 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 准教授 (90444497)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 口腔レンサ球菌 / 過酸化水素 / マクロファージ / 細胞死 / 細胞内オルガネラ |
研究実績の概要 |
昨年度の研究成果を踏まえ、本年度は、口腔レンサ球菌が産生する過酸化水素がどのようなメカニズムでマクロファージの細胞死を誘導するのかを調べた。 まず、この細胞死がアポトーシスによるものかどうかを検討したが、細胞死に伴う細胞核の断片化などは明らかでなく、アポトーシスを誘導するカスパーゼ3や9の活性化も認められなかった。過酸化水素が炎症性サイトカインや ATP の産生を誘導することからインフラマソームの活性化を調べたが、それに伴うカスパーゼ1の活性化なども見られなかった。 アポトーシス誘導もインフラマソーム活性化も認められなかったため、細胞死の様相を顕微鏡下で詳細に観察したところ、細胞死に先だってミトコンドリアやリソソームなどの細胞内小器官の変化が起こっていることが認められた。ミトコンドリア膜特異的な蛍光試薬で調べると、口腔レンサ球菌の感染によってミトコンドリアの膜電位が消失することが分かった。また、 LysoTracker 蛍光試薬で染色した結果から、リソソーム内の pH が酸性から中性になることが判明した。さらに、リソソーム膜に特異的なマーカータンパク質 LAMP-1 を蛍光免疫染色法で検出すると、 LAMP-1が減少し、リソソームが断片化する様子が観察された。過酸化水素を単独で作用させた場合も、同様にミトコンドリアやリソソームの傷害が起こっていた。 これらの結果は、口腔レンサ球菌が産生する過酸化水素が細胞内小器官にダメージを与えることを示唆している。リソソームのダメージがマクロファージの細胞死が誘導する可能性が考えられるが、その詳細は今後の研究課題である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
口腔レンサ球菌が産生する過酸化水素による細胞死がアポトーシスやインフラマソーム活性化によるものではなく、細胞内小器官の傷害によるものであることが判明した。これは予想外の新知見であり、代謝産物が細胞内小器官にダメージを与えるという点で、口腔レンサ球菌の病原性に新しい光を投げかけるものである。
|
今後の研究の推進方策 |
最終年度は、細胞内小器官に対する過酸化水素の作用機序を調べることがメインになる。また、本年度の研究過程で、過酸化水素が好中球に作用して NETosis を誘導することを新たに発見したため、 NETosis 誘導が口腔レンサ球菌の病原性に及ぼす影響も検討する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度秋の時点で論文を投稿したため、掲載料相当分として約9万円を残した。
|
次年度使用額の使用計画 |
上述の論文が受理されたら掲載料として支出する予定である。
|