研究課題
最終年度の研究成果としては,まず,ミティス群口腔レンサ球菌感染が好中球に NETosis (好中球細胞外トラップ:核内 DNA を細胞外に放出することによって周囲の感染細菌を捕捉する)を誘導する事実を見出したことが挙げられる.NETosis は起こるものの,ミティス群レンサ球菌由来の過酸化水素により,好中球本来の貪食作用が抑制され,感染した菌の殺菌・排除はむしろ抑制されることが示唆された.また,マイクロアレイを用いた遺伝子発現変化の解析からは,ミティス群口腔レンサ球菌感染および過酸化水素処理は,マクロファージにストレス応答を誘導し,リポ多糖 (LPS) 刺激によるサイトカイン産生を抑制することが示された.これらの結果は,ミティス群レンサ球菌由来の過酸化水素が,好中球やマクロファージの貪食作用やサイトカイン産生を抑制することを通じて,菌の生存戦略に大きな貢献をしていることを示していると考えられる.3年間におよぶ本研究の成果から,ミティス群口腔レンサ球菌が産生する過酸化水素がマクロファージなどの細胞に対して細胞傷害性を示すことが明らかになった.ミティス群レンサ球菌が産生する過酸化水素は数mM 程度であるが, in vitro で細胞死を誘導するには十分な濃度であった.従来,病原性が強いと言われながらもその正体がはっきりしなかったミティス群レンサ球菌の病原因子が,実は過酸化水素であることを示すことが出来たのが最大の成果であると考えている.
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