研究課題/領域番号 |
26463121
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研究機関 | 日本歯科大学 |
研究代表者 |
河上 智美 日本歯科大学, 生命歯学部, 准教授 (30277595)
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研究分担者 |
苅部 洋行 日本歯科大学, 生命歯学部, 教授 (50234000)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 抗腫瘍薬 / シクロフォスファミド / マウス / 歯根形成 / 小児 / 晩期合併症 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,抗腫瘍薬シクロホスファミド(CY)を投与したマウスの下顎第一臼歯におよぼす影響についてμCT撮影を用いて生後16日齢から27日齢までの歯根形成を経日的に観察することである。 【対象と方法】生後12日齢のICRマウスを用い,対照群は生理食塩水を投与し,実験群にはCY[エンドキサン,塩野義製薬(株)]100mg/kgを腹腔内投与した。その後,生後27日齢まで飼育した後,下顎骨を摘出した。下顎第一臼歯歯根の三次元的形態観察および歯根長を測定する目的で,第一臼歯を中心としてμCT装置(ElescanⅡ,日鉄エレックス社,福岡)を用いて撮影した。その後デジタルデータを得るために断層画像の再構成をおこなった。三次元構築は,画像解析ソフトTRI/3D-BON(ラトックシステムエンジニアリング,東京)を用いた。歯根長の計測は,三次元構築像を骨と歯の閾値で抽出した後,同解析ソフトを用いて,生後16日齢から生後27日齢の第一臼歯遠心根の歯頸部エナメル質形成端から根尖象牙質形成端までの距離を歯根長として計測した。 【結果】生後16日齢の対照群と実験群ではほとんど差は認められなかったが,経日的に実験群の歯根長は対照群に比べ明らかに短かくなっていた。三次元立体構築画像から解析ソフトを用いて歯根長を測定した結果,生後16日齢では統計学的有意差を認めなかった。それに対して,生後27日齢では対照群の歯根長は生後16日齢の約2倍に伸長していたが,実験群では短く,両群間に有意差を認めた(p<0.01)。 【考察】本結果から,CYを歯根形成期のマウスに投与すると,正常な歯根形成を阻害することが明らかになった。シクロホスファミドによって歯根形成に関与するHERSの形態が変化し,機能に異常が生じたと考えられ,早期に歯根形成が停止し,正常な歯根形成が進まなかったことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
全体としておおむね順調に進行しており、昨年度は抗腫瘍薬(シクロフォスファミド)によって小児期マウスの歯根の形成障害の状態をμCTをもちいて形態的な変化を経日的に観察することができた。 現在これらの結果をまとめて論文製作を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
1.μCT立体画像の解析をさらに進めて、定量化を試みる。計測部位や計測項目を再検討して、さらなるデータが得られるか検討する。 2.形成障害に対する予防的方策について文献検索を行い、実験方法について検討し、実施する。 3.これまでに作成した試料から歯周組織変化について定量的な測定が可能であるか検討を加える。 4.学会報告および論文発表を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、設備備品費にて大型回転式ミクロトームの購入予定であったが、大学共同研究室のミクロトームを使用することが可能となったため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
ミクロトームについては、共同研究室のものが使用可能となったが、利用希望者も多いため、今後の使用予約状況によっては次年度での購入を再度考慮していく。 得られたデータ発表の場として、オープンアクセスジャーナルへの論文投稿も考えているため、その際には掲載費が必要となる可能性がある。
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