研究課題/領域番号 |
26463123
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研究機関 | 神奈川歯科大学 |
研究代表者 |
木本 茂成 神奈川歯科大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (90205013)
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研究分担者 |
横山 三菜 神奈川歯科大学, 歯学研究科(研究院), 講師 (10386849)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 口腔筋機能療法 / 口唇圧 / 舌圧 / 口唇閉鎖力 / 小児 |
研究実績の概要 |
平成27年度は前年度に引き続き、神奈川歯科大学付属病院外来に来院した小児患者のうち、口腔周囲筋の機能に問題があり、口腔筋機能療法(以下MFT)の実施を希望した患児を被験者として、研究を継続した。MFTを実施した被験者のうち、舌の運動制限があり、舌小帯短縮症と診断された小児においては、舌小帯切除術実施前からの舌圧の変化に関する検討を行った。MFTを実施した小児で舌小帯に異常がなく、舌の運動制限のない者との比較、検討を行った。平成27年度は、前年度に引き続き以下の項目についての記録を行った。 1.口腔周囲筋の状態に関する検査:付属病院外来で MFT実施時に用いているチェックリストに基づいて、口腔周囲筋の状態を精査し、記録用紙に記載した。 2.歯列・咬合に関する記録:被験者の顔面写真ならびに口腔内写真撮影、上下顎の印象採得、咬合採得を行い、歯列・咬合の状態に関する状態を記録した。 3.口唇閉鎖力の測定:リップデカム LDC-110(株式会社パタカラ製)を用いて、MFT開始前の口唇閉鎖力を測定し、その後 ほぼ1か月毎のMFT実施時に継続して測定し記録を行った。測定データは口唇閉鎖力データ解析ソフトLDCD-03(コスモ計器社製)による解析を行った。今年度は、一般医療機器として認可され平成27年9月に販売が開始された、歯科用口唇閉鎖力測定器「りっぷるくん(株式会社松風製)」による口唇圧の測定を並行して実施した。 4.舌圧の測定:JMS舌圧測定器オーラライズ(株式会社ジェイ・エム・エス社製)を用いて舌の挙上時における口蓋への圧接力として、MFT開始前および、ほぼ1か月毎の MFT実施時に測定を行った。 平成27年度においては、被験者のうち舌の運動制限があった小児と、口唇の閉鎖不全のあった小児とのデータの比較検討を行った。その結果、両者の間に舌圧の増加率に明らかな相違が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成27年度においては、乳歯列後期から混合歯列期を中心にMFTを実施する症例がある程度集積できた。しかしながら、被験者となった小児および保護者の時間的制約や協力度の問題により、研究への参加を同意が得られず、光トポグラフィー装置(NIRS)を用いて口唇閉鎖および舌挙上に関するMFT実施中の脳血流量の測定を行う計画を達成できない状況であった。また、筋電計による口輪筋および頬筋の活動電位測定を試みたが、装置の電極の大きさと必要な電極間距離とが被験者となった小児の口腔周囲筋の面積を超えていたため測定が困難であった。また、咬合の発育段階別の被験症例数が少ないため、機能障害を生じている部位として、口輪筋ならびに舌に分けて測定値の集積と分析を行った。 さらに、研究計画立案時に使用可能な口唇閉鎖力測定装置「リップデカム LDC-110(株式会社パタカラ製)」を用いて口唇閉鎖力の測定を行っていた。平成27年度には新たに開発され、口唇閉鎖力測定装置として現在唯一、一般医療機器として厚生労働省の認可を受けた「りっぷるくん(株式会社松風製)」による口唇閉鎖力の測定を開始した。この新規の装置を使用し、口唇閉鎖力の測定開始したことで、MFT開始前の新規対象者の集積が必要となったことも、研究進行の遅延につながっている。 上記のように当初設定した研究環境の整備の遅れと被験者の保護者の協力度に対する把握の遅れが大きく影響し、研究計画の一部を変更せざるを得ない状況となった。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は平成27年度に続いてMFTの対象患者以外の小児で、正常な歯列咬合を有し、口腔筋機能に異常の見られない小児を被験者として、口唇閉鎖力と舌圧の測定を行い、正常機能を有する小児の標準値を検討するためのデータ集積に努める。 平成27年度までに集積した舌圧および口唇圧の計測値については、本研究で用いている計測装置と同装置を用いた過去の研究結果との比較を行い、被験者のうちで舌小帯の運動制限があり舌小帯短縮症と診断された小児と舌小帯の異常のない小児との間で、MFTによる舌圧ならびに口唇閉鎖力の変化について比較検討を進めてきた。平成28年度については、症例数の更なる集積を行い、統計学的な検討を行う。 口腔周囲筋の筋活動量の計測については、成人において電極の大きさの変更などのカスタマイズを行うことで口輪筋、頬筋等の活動電位を計測する。 一方、研究開始時の計画であった嚥下時の舌運動の計測であるが、本学附属病院が保有していたエックス線映画法:Videofluorography(VF)が廃棄処分となったため、筋の動的な機能評価を行う上で、前年度から継続して筋活動の測定時にはCCDカメラを用いた高速動画撮影が可能なデジタルハイビジョンビデオシステムを用いて嚥下時の口腔周囲筋の動きについての記録を行う。 また、NIRSによる脳血流量の測定が可能な被験者が少なく、想定される症例数の集積が困難な場合を想定し、本研究の被験者となることを同意した本学の教職員および大学院生を対象として、成人における基礎データの収集を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度の直接経費のうち255,570円が平成28年度の使用額として生じた。当初見込んでいた被験者数が予定より少なく、症例データの集積が予想を下回ったため、研究データとしての詳細な検討が困難となった。そのため、データの記録ならびに統計処理に関する謝金が発生しなかったこと、また研究内容の学会発表を見合わせたことにより、出張旅費の支出を生じなかったためである。一方で、研究に関連する消耗品の支出は予想を超えて上回り、その収支差額として上記金額分が平成28年度への繰り越し支出分が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度内において、データ記録ならびに統計処理に関する謝金と研究発表のための出張旅費、さらに論文投稿に伴う費用として支出する予定である。
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