平成28年度は前年度に引き続き、神奈川歯科大学附属病院小児歯科外来を受診した小児患者のうち、口腔周囲筋の機能に問題があり、口腔筋機能療法(以下MFT)の実施を希望した患児を被験者として、口唇閉鎖力ならびに舌圧の測定を行った。平成27年度から継続し被験者を対象として、口腔周囲筋の状態に関する検査、歯列・咬合に関する記録、口唇閉鎖力の測定、さらに舌圧の測定を実施した。口唇の閉鎖機能に関する検討には、口唇閉鎖力測定装置(リップデカム; LDC-110、株式会社パタカラ製)と歯科用口唇閉鎖力測定器(りっぷるくん;、株式会社松風製)を用いて口唇閉鎖力を測定した。また、舌の運動機能に関する検討には、舌圧測定装置(JMS舌圧測定器オーラライズ;、株式会社ジェイ・エム・エス社製)を用いて舌の挙上時における口蓋への圧接力を測定した。平成28年度においては、口腔機能改善の指標として、以下の項目についての検討を加えた。 1)健常小児における口唇閉鎖力、舌圧の検討 2)舌小帯施術患者におけるMFTの効果についての検討 3)舌圧と口唇圧の関連性についての検討 MFT実施患者において舌圧の改善と口唇圧の変化との関連性についての検討を加えた。その結果、MFT実施患者において、全ての症例で舌圧および口唇圧ともに術後の値は術前(MFT開始時)と比較して高い値を示した。また、舌小帯伸展量を測定することが困難な症例においても術後の舌圧の上昇がみられたことから、舌の動作性が改善されたと考えられた。さらに、口唇に対するMFTを行わなかったにもかかわらず、術後の口唇圧は上昇していたが、舌小帯切除術とMFTによって低位舌が改善し、口唇閉鎖機能も改善されたものと考えられた。MFT時に舌圧・口唇圧を測定することは、数値に表れるため患児のモチベーション維持に有効であると考えられた。
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