研究課題
最終的な研究目的である「若年、高齢の健常者およびダウン症候群患者における唾液成分の活性酸素産生とプロテオームの変化という視点から歯周病の疾患メカニズムを解明する」を達成するために,最終年度も引き続き,被験者の増加を図り,より信頼性の高いデータを蓄積し,多面的に検討した.昨年度から継続してきた唾液タンパク質のプロテオーム解析の結果から、健常者と比較して、ダウン症候群では細胞外マトリックスなどの歯周組織破壊の亢進に対して,タンパク分解阻害酵素の発現が増加していることが明らかとなった.また,免疫応答に関するタンパク質の発現が増加していたことから,炎症反応においても生体の適応反応がみられたと考えられた.一方で,アポトーシスを促進させるタンパク質や糖代謝を低下させるタンパク質の発現の増加や抗菌反応に関連するタンパク質の発現の減少がみられた.これらタンパク質の発現の相違がダウン症候群の歯周病の重症化に関連していることを第33回日本障害者歯科学会学術大会にて発表し、優秀発表賞を受賞した。また,初年度から開始している歯周療法における検討に加え,昨年度から新たに開始した口腔清拭による方法においても,要介護高齢者を対象に処置開始前後の臨床データと唾液中の抗酸化能のデータを蓄積した.口腔の清拭を行うことで、臨床所見として、全身的には37.5℃以上の発熱回数の減少がみられ,口腔所見としては、歯周病原菌数の減少、plaque indexの改善傾向がみられた。それら臨床所見の変化に伴い、唾液中の活性酸素消去能は、スーパーオキシド(O2・ー)とヒドロキシラジカル(HO・)産生に対する消去能ともに有意に増加した.この結果に関しては第28回日本老年歯科医学会学術大会にて報告する予定である。
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