研究課題
歯周炎は切迫早産や早産のリスクファクターと考えられている。しかしながら、その発症メカニズムには不明な点が多い。我々は、歯周病原細菌が抗リン脂質抗体症候群の標的分子であるβ-2糖蛋白質上のTLRVYKへの交差反応による血栓症が悪化しているという仮説を立て研究を行った。95人の妊婦(47人の切迫早産妊婦と48名の健常妊婦)で研究を行った。歯周疾患の臨床症状と歯周病原細菌を測定した。TLRVYK蛋白と歯周病原細菌において相同性の高いタンパク(Aggegatibacter actinomycetemcomitans 上のSIRVYK、Porpgyromonus gingivals上のTLRIYT、Treponela dentocla上のTLALYK)との交差反応をELISA法にて測定した。血清中の高感度CRP、抗TLRVYK IgG抗体価、抗SIRVYK IgG抗体価をELISA法にて測定した。細菌相同性のある蛋白に対するウサギ特異抗体の実験の結果、anti-SIRVYK IgG抗体のみがTLRVYK蛋白に反応した。多変量解析の結果、抗SIRVYK IgG抗体は切迫早産の診断と有意な関連があった。95名の被験者のうち、14名(14.7%)が早産であった。早産は抗SIRVYK IgG抗体価が平均より高い群において、低い群よりも高い割合を示した。47名の切迫早産のうち13名が早産となった。回帰分析から過去喫煙、P.gingivalisの存在、抗SIRVYK IgG抗体が早産と有意に相関していた。これらのことから、P.gingivalisの感染とSIRVYKへの抗体反応が切迫早産と早産に関連している可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
本年度は、ヒトの疫学研究の結果に基づいて、P.gingivalisの感染と出産についてマウスモデルでの検討を行っている。一定の濃度でのP.gingivalusの感染により、胎仔が低体重となることを明らかにした。
P.gingivalisの感染がどのように影響して低体重となるかを明らかにするために、マウスモデルを用いて、臓器毎のmRNAの変動についてDNA microarray法を用いて網羅的に検討する。
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The Journal of Clinical Investigation
巻: 126(3) ページ: 887-53
10.1172/JCI82788
Journal of Periodontal Research
巻: in press ページ: in press
10.1111/jre.12387