研究課題
歯周病の観血処置においては一過性の菌血症が発生することが知られている。血流に入った細菌は肝臓において食細胞により貪食されるため、健常人においては殆ど影響がない。しかしながら、感染性心内膜炎のハイリスク患者や人工関節置換術の既往がある者、免疫力の弱い高齢者などにおいては、生き残った菌が体内の様々な臓器に定着し、重篤な影響を及ぼす可能性がある。申請者はこれまでに、歯周治療に必須の治療法であるスケーリング・ルートプレーニング(SRP)後の菌血症発生に注目し、2つの臨床研究を行ってきた。1報目では、1/4口腔SRP後に高頻度(90%)で菌血症が起き、抗菌薬(アジスロマイシン)の併用により菌血症発生は大幅に低下(20%)することを明らかにした。2報目では、硬組織にも使用できるエルビウムヤグ(Er: YAG)レーザーを中等度歯周炎患者に用いると、菌血症を起こさずにスケーリングを行えることを報告した。そこで本研究では、重度歯周炎患者におけるSRP時の生体応答反応を解析し、その対策を検討することを目的とした。当初は3群に分けた相関関係を比較解析する予定であったが、予備研究の結果に基づき、以下の2つの研究に分けた。(1) フルマウスSRPを行った際の生体応答およびアジスロマイシン併用群との比較 (2) 歯周ポケットに対する抗菌的光線力学療法および局所薬物配送システムの臨床・細菌・生化学的効果の評価その結果、フルマウスSRPの1日後には血清中高感度CRP上昇など全身的な急性期反応が起きているが、アジスロマイシンの併用によりそれらは抑制できることを明らかにした。また、機械的除去療法前であっても、ミノサイクリン軟膏の注入により、歯周ポケット内の細菌数や歯肉溝滲出液中の生化学マーカー(IL-1beta, IFN-gamma)のレベルは改善することを実証した。
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