研究課題/領域番号 |
26463136
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
讃井 彰一 九州大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (70507780)
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研究分担者 |
武富 孝治 久留米大学, 医学部, 助教 (10553290)
西村 英紀 九州大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (80208222)
福田 隆男 九州大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (80507781)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | Sprouty2 / M2 macrophage / periodontal regeneration / P. gingivalis LPS / IFN-γ / efferocytosis |
研究実績の概要 |
歯周炎を始めとする炎症反応では、収束過程に近づくにつれて組織修復を担うM2マクロファージが主体となるといわれている。一般に再生過程は炎症により強く阻害されるため、歯周組織再生の成功にはこのM2細胞の誘導が不可欠である。一方、申請者らはSpry2という分子を抑制することで、M2細胞への転換・歯肉上皮のダウングロースの防止・強力な骨造成の可能性を見いだしている。本研究の目的は、M2細胞への転換のメカニズムを解明すると共に、Spry2が阻害される作用点をタンパク質構造解析より割り出しSpry2阻害剤を開発することである。最終的に、歯周組織破壊が起きた部位に、創薬されたSpry2阻害剤を局所適用することで、炎症の終焉および速やかな骨造成が開始される新しい歯周組織再生療法を開発し、その有用性を確立したいと考えている。 現在までの研究成果は以下の通りである。 通常、マクロファージはP. gingivalis LPSとIFN-γ刺激によりM1細胞の表現型を示すが、siRNAにてSpry2を抑制するとJ774.1マクロファージではiNOSの活性が抑制されると同時にArginase1の活性化を示した。また、LPSとIFN-γ刺激によりSpry2抑制マクロファージでは炎症性サイトカインであるIL-12、IL-6の産生が減少、抗炎症性サイトカインであるIL-10の産生亢進が確認された。さらに、アポトーシス細胞の認識と除去 (efferocytosis) の効率を検討したところ、Spry2を抑制したマクロファージにおいて、アポトーシス胸腺細胞のefferocytosis促進を確認した。加えて、J774.1マクロファージにおいてSpry2を抑制すると活性型Rac1の亢進が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
動物実験と構造解析の成果がやや遅れてはいるが、培養細胞の細胞機能解析において細胞シグナリングの詳細が判明しつつあるため、上記の区分とした。
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今後の研究の推進方策 |
Spry2の抑制は炎症の収束に関わる可能性があることから、新しい歯周組織再生療法の開発に対して一助を担うことが期待される。また、過去の研究より、マクロファージにおいてRac1が活性されるとM2マクロファージへの分化およびefferocytosisを促進させることと、腸管上皮細胞にてSpry2の強発現が活性型Rac1を抑制することが分かっている。したがって、Spry2抑制によるM2マクロファージへの分化シフトはRac1を介して行われる可能性が示唆された。今後はさらにSpry2の抑制がマクロファージ分化において、どのシグナル伝達分子に作用しているのか、分子生物学的に解明する必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は細胞培養実験が中心で、経費のかかる動物実験がやや遅れている。動物実験の研究を次年度中心に行うため、これを次年度に繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
Spry2を阻害する可能性のある分子をプロテオミクス解析により探索し、実験動物の歯周炎部位へ局所投与を行い、Spry2阻害剤のM2転換効率および歯周組織再生効率を測定する。同時に副作用による異常所見や周囲組織の癌化の有無等を経時的に観察する。また、多方面からの検討として、Spry2標的siRNAの局所投与も同時に確認する。
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