研究課題/領域番号 |
26463137
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
福田 隆男 九州大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (80507781)
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研究分担者 |
西村 英紀 九州大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (80208222)
讃井 彰一 九州大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (70507780)
武富 孝治 久留米大学, 医学部, 助教 (10553290)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | アメロジェニン / Grp78 / 歯根膜 / Rac1 |
研究実績の概要 |
【目的】 我々は、エナメル基質蛋白の主成分であるアメロジェニンのプロテオーム解析を行い、新規アメロジェニン会合分子としてGrp78を同定・報告してきた。歯周組織再生に歯根膜が必須である観点より、ヒト歯根膜幹細胞/前駆細胞株(hPDLSCs) におけるアメロジェニン(rM180)刺激とGrp78が及ぼす影響を検討した。 【材料及び方法】Grp78を強発現またはノックダウンしたhPDLSCsで以下の検討を行った。①Grp78の発現分布およびrM180細胞内取り込み時のGrp78の局在変化:共焦点蛍光顕微鏡撮影 ②遺伝子発現変動の検討:マイクロアレイ解析 ③細胞増殖・細胞遊走・細胞接着実験 ④Grp78強発現およびrM180刺激の細胞骨格への影響:共焦点蛍光顕微鏡撮影 ⑤RhoファミリーG蛋白活性化:Rac1,Cdc42 activation assay 【結果および考察】rM180はhPDLSCs細胞内へ取り込まれる際に、細胞膜上に発現しているGrp78と共局在している事を確認した。マイクロアレイ解析では、rM180刺激によりTGF-経路を活性化する一方で、Grp78発現量が細胞遊走関連遺伝子群の発現制御に関与することを確認した。また、rM180刺激はhPDLSCsの細胞増殖へ影響及ぼすことなしに、細胞接着・細胞遊走能を促進したが、これらの効果はGrp78の発現量依存性であった。以上よりhPDLSCsにおけるアメロジェニン誘導性の細胞遊走促進効果はGrp78依存性であり、Rac1の活性化と葉状仮足の形成がアメロジェニン誘導性の細胞遊走に必須のプロセスであることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在、上述の結果について論文投稿中である。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度以降の計画 【II. 新規アメロジェニン会合分子による免疫制御】 本研究では新規アメロジェニン会合分子Siglec-10が、炎症反応をはじめとした免疫応答に及ぼす影響について検討する。EMDによる歯周外科処置に、疼痛・腫脹の軽減を伴う治癒促進効果があることが経験的に知られているが、実際アメロジェニンが炎症性/抗炎症性サイトカイン産生の面から抗炎症作用を示す報告が存在する(Almqvist et al: Cytokine.,58:2012)。そこで、本研究では同定されたアメロジェニン会合分子の中で、唯一の免疫受容体蛋白であるSiglec-10に注目する。 Siglec-10 (sialic acid-binding Ig-like lectin-10) はシアルロン酸含有糖鎖を認識する、免疫グロブリンスーパーファミリーの1種であり、ITIMとよばれる配列モチーフを介した抑制性免疫応答へ関与する。近年、主に以下のような報告があるが、作用機構の詳細に関しては未だ不明な点が多い。 ① Ca2+シグナル阻害によりB1細胞の抑制に関与 ② 血管内皮のVAP-1との相互作用による抗炎症作用③ NFkB経路の阻害による免疫制御への関与 これらに加え、炎症終結に伴う組織修復を担うM2マクロファージの活性化への関与の可能性について着目し、ヒト培養マクロファージ株(U937)を用いて実験を行う。アメロジェニン刺激による細胞動態をSiglec-10強発現もしくはsiRNA導入株で解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品試薬を一括購入等により、予定よりも低価格で購入できコストを下げられた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の解析項目が多岐にわたるため、試薬購入にまわす予定である。
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