研究実績の概要 |
【目的】 EMDによる歯周外科処置に, 疼痛・腫脹の軽減を伴う治癒促進効果があることが経験的に知られているが, 実際アメロジェニンが炎症性/抗炎症性サイトカイン産生の面から抗炎症作用を示す報告が存在する. 本研究ではアメロジェニンの免疫応答に及ぼす影響を検討するために, マクロファージでのマイクロアレイによる網羅的遺伝子解析とその表現系への影響について確認した. 【材料および方法】ヒト単球系細胞株 U-937 をPMAでマクロファージへ分化誘導を行った。① マイクロアレイ解析: LPS + Amelogenin / LPS の比較で炎症関連遺伝子群の経時発現をReal-Time PCR, Western Blotとあわせて確認した。②マクロファージ表現形の検証: M1マーカー(iNOS, CD86), M2マーカー(CD206, CD163)の発現と併せて細胞形態を共焦点レーザー顕微鏡で観察した. また, growth factorsの発現についても同時に確認した. 【結果】① LPS + Amelogenin刺激群において, 抗炎症関連遺伝子TSG-6, 抗酸化関連遺伝子SOD2, 貪食促進関連遺伝子SLAMF1の特異的な亢進を確認した. ② LPS刺激ではM1型に特徴的な円状の細胞形態を呈した. 一方, Amelogenin刺激ではM2マーカー発現及び紡錘形への細胞形態の変化を確認し, さらにVEGFの遺伝子発現亢進を確認した. 【考察および結論】 アメロジェニン刺激で炎症・抗炎症作用の両方が活性化される事が示唆される一方,抗炎症遺伝子の著明な増幅が確認された. ヒートマップ解析から, アメロジェニン刺激の初期は炎症反応の亢進による炎症期間の早期収束を, 後期には抗炎症作用を促進する可能性が示唆されるとともに,M2マクロファージへの分化促進の能性が示された.
|