研究課題/領域番号 |
26463138
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研究機関 | 福岡歯科大学 |
研究代表者 |
金子 高士 福岡歯科大学, 口腔歯学部, 教授 (10284697)
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研究分担者 |
原 宜興 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 教授 (60159100)
吉村 篤利 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 准教授 (70253680)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 歯周病原細菌 / インフラマソーム / ピロトーシス / NLRP3 / IL-1β / カスパーゼ1 / 歯周病 / 骨吸収 |
研究実績の概要 |
病原性を示す細菌の特徴の一つとして宿主細胞内への侵入能および生存能があるが、細胞内に侵入した細菌の排除メカニズムは明らかになっていない。近年、細胞質内およびエンドソーム内の自然免疫受容体が細胞内細菌を検知し、インフラマソームを介したカスパーゼ1、4、5を活性化し、ピロトーシスを呼ばれる形態の細胞死を誘導することにより、細胞内容物とともに細菌を細胞外に排出し、除菌するメカニズムが報告された。一方これらのカスパーゼはIL-1βやIL-18などの炎症性サイトカインのプロセッシングと活性化にも関与しているため、炎症の誘導にも関与している。しかしながら歯周病原細菌感染とカスパーゼ活性化に関する研究は少ない。そこで我々は歯周病原細菌によるインフラマソーム活性化を介した、カスパーセの活性化とピロトーシス、IL-1βの誘導に関して基礎実験を行った。 Porphyromonas gingivalis, Aggregatibacter actinomycetemcomitans刺激によりTHP-1細胞はIL-1βを培養液中に放出した。IL-1βの放出はNLRP3インフラマソームインヒビターのMCC950とカスパーゼ1インヒビターのz-YVAD-fmkにより抑制されたが、IL-8の放出は影響を受けなかった。また細菌刺激によるTHP-1細胞からのLDHの放出は誘導されなかった。このことは歯周病原性細菌刺激により、カスパーゼ1の活性化とIL-1βの活性化は誘導されるが、ピロトーシスは誘導されないことを示唆している。またこれらの細菌によるラット歯周炎モデルにおいて、NLRP3を抑制する作用を有する糖尿病治療薬グリブリドを投与したラットの歯周組織は炎症性細胞浸潤と歯槽骨吸収が減少していた。このことからNLRP3活性化が歯周炎の発症、進展に関与することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究期間中に長崎大学から福岡歯科大学へ研究期間の移動したために、研究の進捗状況に遅延が生じた主な理由である。さらに細胞培養液中のカスパーゼ1のプロセッシングをimmunoblottingで確認しているが、適切な抗体がないためにうまく検出できていない。
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今後の研究の推進方策 |
カスパーゼ1の活性化について新しい抗体でImmunoblottingを行う予定である。Immunoblottingがうまくいかない場合においては、カスパーゼ1の酵素活性を測定する予定である。またカスパーゼ4、5のIL-1β活性化への関与も検討する。さらにラット歯周炎モデルを用いた、カスパーゼ4、5の歯周炎の発症、進展における関与についても明らかにする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
所属研究期間が長崎大学より福岡歯科大学に変更になり、実験中止期間に伴う実験の遅延が生じたため自然と使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
研究環境も整備されつつあり、今後は実験の遅れを取り戻すべく、実験を行っていく予定である。それに伴い次年度に今年度研究経費を実験計画に基づいて執行する。
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