研究実績の概要 |
病原性を示す細菌の特徴の一つとして宿主細胞内への侵入能および生存能があるが、細胞内に侵入した細菌の排除メカニズムは明らかになっていない。近年、細胞質内およびエンドソーム内の自然免疫受容体が細胞内細菌を検知し、インフラマソームを介したカスパ ーゼ1、4、5を活性化し、ピロトーシスを呼ばれる形態の細胞死を誘導することにより、細胞内容物とともに細菌を細胞外に排出し、除菌するメカニズムが報告された。またピロトーシスによって放出された細胞内容物はDangerシグナルとして近接する細胞に作用して、炎症応答を誘導することが知られている。本年度はカスパーゼ4,5によるピロトーシスの誘導に関して研究を行った。ヒトマクロファージ細胞株のTHP-1とU937のカスパーゼ4、5の遺伝子発現をRT-PCR法によって調べたところ、これらの細胞はカスパーゼ4のみを発現しており、カスパーゼ5の発現は認められなかった。さらにカスパーゼ4のタンパク発現はWB法によって確認した。近年カスパーゼ4は細胞内LPS受容体として作用し、ピロトーシスを誘導することから、E.coliのLPSをTHP-1細胞にトランスフェクションし、細胞死を培養液中のLDH酵素活性を指標としてLPSのカスパーゼ活性化を検討した。E.coli LPSを24時間トランスフェクションすると40%の細胞が細胞死を起こした。この活性はpan-caspase抑制剤のz-VAD-fmk, カスパーゼ4抑制剤のz-LEVD-fmkによって抑制された。これらのことからマクロファージ内に侵入したグラム陰性細菌のLPSは、カスパーゼ4によって認識され、ピロトーシスを誘導することが示唆された。
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