研究実績の概要 |
SH基を有する抗酸化剤を用いて酸化ストレスを抑制し、口腔内好中球の生体防御機能を高めることで、生物学的根拠に基づく新しい歯周治療概念を構築することを目指して、口腔内好中球の細胞死およびミトコンドリア機能制御に関わるメカニズムを解析した。 口腔内好中球から安定的にmRNAを回収するための予備的実験を行い、RT-PCR法で歯周炎歯肉からアポトーシス抑制遺伝子FLIPmRNA発現の様態を調べたところ、約4割のサンプルから検出が可能であった。この結果は歯周炎歯肉に浸潤したリンパ球がアポトーシスによって細胞死を抑制された結果、慢性炎症が持続する結果と矛盾しなかった。一方、口腔内好中球からはFLIPmRNAは検出されず、アポトーシス抑制分子であるbcl-2は検出されず、アポトーシス促進性分子であるBadの発現量が高く、抑制性分子であるリン酸化Badの発現量が有意に低い結果を支持した。Bax発現は末梢血好中球のそれと変わらなかった。 GCF中のIL-1beta, IL-6およびIL-17濃度上昇は歯周組織における炎症および免疫応答の結果と解釈された。炎症物質が高濃度に存在する酸化ストレス下において、好中球は細胞内のグルタチオン濃度およびcaspase8が低下していたことから、アポトーシスに加えてネクローシスも関与していると考えられた。 ミトコンドリアの機能制御に関しては、活性酸素(ROS)によるchitochrome c の産生亢進とcaspase活性の低下がみられたことから、caspase非依存的な経路が関わる可能性があり、口腔内好中球のミトコンドリア機能制御を検討する場合、アポトーシスのみならず、オートファジーおよびミトコンドリアのマイトファジーに関わる分子群の検索にも研究を発展させる必要がある。
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