研究課題/領域番号 |
26463146
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研究機関 | 日本歯科大学 |
研究代表者 |
沼部 幸博 日本歯科大学, 生命歯学部, 教授 (90198557)
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研究分担者 |
伊藤 弘 日本歯科大学, 生命歯学部, 准教授 (30184683)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 歯肉溝滲出液 (GCF) / 歯周組織検査 / 遊離ヘモグロビン / 炎症 / イムノクロマト法 / 潜血 |
研究実績の概要 |
本邦での成人の歯周病有病率は未だに高く,これは歯周病の検査・診断・治療技術が不十分であることを示唆して歯肉溝滲出液(以下GCF)は各歯の部位別病態を反映する多彩な情報を含み,簡便かつ無痛的に採取可能な優れた検査試料であることが知られている。我々はチェアサイドで迅速にGCF中のヒトHemoglobin(Hb)を検出し,歯肉の微細な炎症反応を探知可能な迅速診断キットを開発中であり、これまでの研究期間でその具備条件を有する試作品が完成したので、対外診断薬としての可能性について検討した。 材料および方法: SPTに移行した64名の歯周病患者(平均年齢59.0歳)の103部位からペリオペーパー(Oraflow Inc.) の30秒間挿入によりGCFを採取後,試作キットでHbの陽性反応を検査, さらに直ちにHb反応をデンシトメーターで定量化した。さらに採取したGCFに関しては,液量およびALP, AST活性, さらに蛋白質量, ルミノールなどの測定も行った。臨床パラメータとしてPlaque Index(PlI),Gingival Index(GI),Clinical Attachment Level(CAL),Probing Pocket Depth(PPD),Bleeding on Probing(BOP)を評価し,GCF検索結果との関連を解析した(本研究は日本歯科大学生命歯学部倫理委員会の承認を受けた(承認番号2111))。 結果および考察: 従来の歯周病の臨床パラメーターであるBOP(+)を示した部位は試作キットでもHb(+)を示し、さらにBOP(-)でプロービングでは炎症の兆候が探知できなかったにも係わらずHb(+)を示した部位についても検索したところ、Hb(+)部位ではGCF量,生化学マーカーのALPとAST活性,さらに蛋白質量などがHb(-)部位と比べて高値で、統計学的に有意であった。これらのことからHb検査はBOP等で探知できる部位の病変の探知に加え,BOPでも探知できない,炎症が潜在的に存在する組織破壊をも探知することが可能で,新たな歯周病検査の可能性を有していることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の順調な進展の理由として,歯周病の迅速診断検査キットとしての具備条件を満足させる試作キットが予定通り作成できたことが大きく,研究実績の概要でも記載した通り,現在対外診断薬としての臨床でのトライアルを開始している。 採取サンプル数も増加しており,本年度の半ばで試料収集も完了する予定であり,その後さらなるデータ数を使用した統計解析,得られた結果の学会発表,論文作成の準備も合わせて開始している。
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今後の研究の推進方策 |
先に述べたように採取サンプル数も増加,蓄積されており,本年度の半ばで試料収集も完了する予定である。 これらの結果に基づき、本検査キットの測定値と従来の歯周病の臨床検査データとの比較検討を行い,キットの使用方法,検査結果の応用方法の更なる検討を行いながら使用マニュアルの雛形作りなども同時に進行させる。 また研究成果の国際学会での発表や論文投稿の時期も来ていると考え、結果の公表についても今後力を入れて行く予定である。さらにこの試作キットの可能性についても再検討し,歯周病の検査以外への応用,たとえば歯周外科手術やインプラント埋入手術後の創傷治癒確認に用いるなどの新たな可能性へも言及して行く予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
IC法によるヘモグロビン検出用の試作キットの感度などの決定が予定よりも早く終了し、検討に必要なキットが予定よりも少ない数ですんだこと,そしてそれに伴う解析に用いる試薬や器具の数が少なくすんだこと,さらに当該年度に予定していた多量のデータの統計解析を次年度送りにしたため統計ソフト購入を見送ったことが主要因である。さらに本年度は人件費,謝金が発生していないのもその一因である。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は最終年度であるため,キットの解析にかかる金額は発生しない代わりに,データ解析用の統計ソフトの購入,国内外の学会での成果報告,学術雑誌への投稿などを行う必要があることから,計画通りの予算の使用が可能となると考えられる。
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