研究課題
歯周病は口腔内だけでなく、全身疾患に繋がる問題である。しかし未だに日本国民の成人の80%以上が罹患し、歯の最大の喪失原因であることからも、現在の歯周病検査と診断、それを治療に繋げる技術が充分ではないことは明白である。その原因には、歯周病発症の早期探知ができていないこと、治療計画立案が画一的検査結果に基づき行われていることが考えられる。そこで本研究では、3年の研究期間において、新たな歯周組織検査の開発として、歯の部位ごとの微細な歯周組織の病態変化が把握可能で、客観的検査結果が得られる歯肉溝滲出液(以下GCF)に焦点を当て、GCF中成分変化の探知、とくに炎症の存在を反映する潜血の証拠であるヘモグロビン探知を応用した歯周病の迅速診断キットを開発した。そしてそれを歯周病の早期発見、早期治療へと臨床応用する方法について考察を行った。このキットの概要は、GCFの溶解液にヒトヘモグロビンモノクロナール抗体を塗布した細長い濾紙を浸漬後、展開したGCF中に一定量のヘモグロビンが存在すると赤色にバンド状に発色(陽性)、存在しないと無色のまま(陰性)となる発色の有無を利用して、その部位に炎症があるか否かを評価するものである。そしてこのキットでの検査値は、従来のプロービングによるBleeding on Probing(BOP)の検査値と有意に相関することが示され、結果を得るのに数分しか要さないことから、チェアーサイドで使用可能な歯周病迅速診断キットと位置付けることができた。さらに臨床現場での使用方法として、歯周組織の炎症を探知する点で、プロービングができない部位や、BOPの結果を補完する目的で応用可能な歯周組織検査であるとも考えられた。
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Journal of Periodontology
巻: 87 ページ: 1314-1319
10.1902/jop.2016.160092