研究課題/領域番号 |
26463147
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研究機関 | 神奈川歯科大学 |
研究代表者 |
高橋 聡子 神奈川歯科大学, 歯学研究科(研究院), 講師 (30301592)
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研究分担者 |
浜田 信城 神奈川歯科大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (20247315)
松尾 雅斗 神奈川歯科大学, 歯学研究科(研究院), 准教授 (30190416)
高橋 俊介 神奈川歯科大学, 歯学研究科(研究院), 准教授 (60206810)
李 昌一 神奈川歯科大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (60220795)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 歯周病治療学 / 活性酸素種 / 循環器疾患 |
研究実績の概要 |
近年、高血圧症や糖尿病などの全身疾患のリスクファクターとして歯周病が関与している可能性が疫学的に証明されはじめ、ペリオドンタル・メディスン;歯周医学 という概念が広がりつつある。わが国の3大死因疾患中の心疾患・脳血管疾患や糖尿病合併症である循環障害は血管内皮細胞の機能低下を伴う動脈硬化性疾患であり、これらの循環器疾患が歯周病菌であるPorphyromonas gingivalis(Pg) の感染により増悪するという疫学的報告がある。これに加え、Pgが血行性に全身に伝播することにより、末梢性に多形核白血球が活性酸素種を遊離しているという報告もあるが、これらPg感染と活性酸素と循環器疾患との因果関係は明確になっていない。本研究課題では脳卒中易発症性高血圧モデルラット(SHRSP)にPgを感染させたモデルを使って、歯周組織循環障害と全身血管の機能障害の解析を行い、さらには血管傷害への活性酸素の関与の解明を行うことを目的とした。 本年度は、1)レーザードップラー法を用い、SHRSPの歯肉反応性充血を測定し、SHRSPではコントロールと比べて歯肉微小循環にどのような変化があるか 2)SHRSP、コントロール群に歯周病菌であるPorphyromonas gingivalis(Pg)を感染させ、レーザードップラー法を用いてPg感染により歯肉微小循環がどのように変化するかを検討した。 反応性充血反応は、最大血流量(Peak)、最大血流量の半減時間(T1/2)、増加血流量(Mass)を用いて評価した。この結果、SHRSPにPgを感染させると、血管弛緩反応の促進と、血管弾性の低下傾向が認められた。この結果はPg菌がSHRSPの口腔内微小循環に影響を与える可能性を示唆しており、歯周病治療にとって意義深い。今後は抗酸化物質を用いた実験を行い、抗酸化の観点から歯周病治療を検討していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高血圧モデルラット(SHRSP)、コントロール群、Pg菌を感染させた動物モデルを用いた実験を行っている。 26年度の実験計画では 1)レーザードップラー法を用い、SHRSPの歯肉反応性充血を測定する。高血圧症が歯肉微小循環にどのような影響を及ぼすかを解析する。さらに、抗酸化物質であるクルクミンを経口摂取させ、効果を解析する。 2)SHRSP、コントロール群に歯周病菌であるPorphyromonas gingivalis(Pg)を感染させ、レーザードップラー法を用いてPg感染により歯肉微小循環がどのような影響を受けるかを解析する。さらに、クルクミンを経口摂取させ、効果を解析する。 という予定であった。クルクミン摂取についての実験は現在進行中である。コントロール、SHRSPともに長期にわたり飼育する必要があるため、現在、実験を継続して行っている。
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今後の研究の推進方策 |
実験は予定通りに推進していく。現在行っているコントロール群、SHRSP群、Pg感染群にクルクミンを経口摂取させる実験では、血管反応を指標に歯周病治療に対する抗酸化物質クルクミンの効果を検討する予定である。さらにクルクミンを経口摂取させたラットのPg感染による骨吸収量を測定し、高血圧症と歯周病の進行と抗酸化物質の効果を解析する。また、後大動脈を摘出し、等尺性張力変化を指標に血管機能の解析をin vitroで行う。その他に、血管鋳型標本を作製し、全身の血管の傷害程度を精査する。また一方で、ESRを用いて、活性酸素を測定し、全身の酸化ストレスの解析を行う。 これらの結果を考慮し、抗酸化物質を経口摂取させるとPg感染による循環器傷害が改善するかどうかを評価する。最終的には、抗酸化物質であるクルクミンの歯周病治療の可能性を確認し、臨床応用のエビデンスを確立することをゴールとし、上記実験を推進していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は出張旅費での支出がなかったため、次年度への持越しが生じた。 またクルクミンを用いた実験が完了していないため、試薬代の一部が次年度へと持ち越しとなっている。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度以降も継続して実験を遂行していくため、実験用動物(WKY、SHRSP)、血流計実験用試薬、ESR実験用試薬、細菌感染実験用試薬、血管鋳型標本作製用試薬、ガラス製品、プラスチック製品等の消耗品の他、学会発表のための旅費や論文校閲などに使用する予定である。
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