研究実績の概要 |
加齢に伴う生物学的老化は,心臓血管疾患(cardiovascular disease: CVD)の有力な危険因子である。しかし,生物学的老化とCVDの原因となる動脈硬化症の関連メカニズムは解明されていない。本研究では,急性炎症マーカーである血清アミロイドA(SAA),およびその受容体シグナルが血管老化に関与していると考え,1)ドナー年齢の違いによるSAA刺激下でのSAA受容体(TLR2),接着分子,炎症関連因子発現程度の違い,2)SAA刺激による老化関連遺伝子発現を解析することにより,SAAを介する歯周病から動脈硬化症への悪化機序から,生物学的老化へのメカニズムの詳細を解明することを目的とする。 平成28年度は,ドナーが21, 27, 81歳のヒト大動脈内皮細胞(HAECs)を使用し,長期培養を行い,老化指標のβ-gal染色,蛍光測定した。SAA受容体(TLR2),接着分子,炎症関連因子,老化マーカーのmRNA発現をリアルタイムPCR法にて測定した。詳細は以下のようである。 (1) HAECを専用培地で12穴プレートに播種し,10,20日間培養を行った。 (2) HAECへのヒトリコンビナント SAA(hSAA)の添加:培養開始後,培地交換時(2日毎)に25μg/mlの濃度のhSAAを添加し実験群とし,無添加群は対照群とした。 (3) SAA添加による SAA受容体,炎症関連因子の発現確認:(2)の細胞からmRNAを抽出,逆転写,cDNA変換,リアルタイムPCR法にてTLR2, ICAM1, VCAM1, MCP1, E-selectin P-selectin, L-selectinの発現を測定した。 (4) hSAA添加による老化マーカーの発現の確認:(3) と同様に,p53,p21の発現をリアルタイムPCR法にて測定,年齢毎の実験群と対照群で比較した。
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