研究課題
糖尿病は歯周疾患の発症および進行に影響を与えると考えられているが、両疾患の関与に関する詳細なメカニズムは、未だ不明な点が多い。高血糖状態は、炎症誘発物質である終末糖化産物(AGE)の産生および組織への蓄積を誘発しており、Ⅱ型糖尿病患者において、血清中のAGE濃度と歯周病の重症度は、有意に相関している。今回、マウス由来歯肉線維芽細胞とマクロファージにAGEおよび歯周病原細菌由来LPSを添加し、糖尿病環境下における炎症性組織代謝と免疫応答の機序に関して、検討した。1. マウス歯肉線維芽細胞に0.01nMから10nMの濃度範囲に調整したAGEと10ng/mlのLPSを添加し、一日間培養した。細胞よりtotalRNAをグアニジンを用いて抽出し、Real-timePCR法を用いて組織代謝および免疫応答に関連するIL-1、IL-6、TNF-α、OPG、MMP-1、MMP-3、TIMP-1、TIMP-2、TypeⅠ Collagenの遺伝子発現を調べたところ、低濃度のAGE刺激は、これら遺伝子発現の増加を誘導した。一方、LPSの添加は、AGEによる遺伝子発現増加への付加的な影響を与えなかった。また、低濃度のAGE刺激は、歯肉線維芽細胞の細胞増殖能に影響を与えなかった。しかしながら、高濃度のAGE刺激は、歯肉線維芽細胞のアポトーシスを誘導した。以上の事から、AGEは、組織代謝と免疫応答を誘導し、歯周炎による歯周組織破壊や創傷治癒に影響を与える可能性が示唆された。
3: やや遅れている
終末糖化産物は、その刺激濃度によって、細胞に正反対の反応を引き起こすことがあり、至適濃度の検索に時間を費やした。
実験条件の設定が決まり、研究データが安定してきたため、引き続き計画を遂行していく。また、同学内科学講座と連携し、実験計画および結果に関して討論し、必要に応じて研究計画の修正を加える。実験の遂行に関しては、分担者と共に当講座の大学院生より協力を得ている。
予備実験の期間が予定より長くなったことで、使用する試薬の購入が遅くなった。また、当教室に既に備えられている試薬を使用した実験が多かった。
研究計画の進行が、予定より遅れているため、進行速度を上げることで、試薬の購入頻度が増加すると考えられる。当該助成金と次年度助成金の使用で賄う事とする。
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